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 上野山さんからのリポート
 「1匹の魚で釣り人が幸福に」

  白木 (福井県)
   2002/11/24

 


秋も深まり磯釣りには絶好の季節となりましたが11月は荒れ模様の日が多く、なかなか沖磯では竿を出せません。
11月23日は、波も1.5mのち1mということでしたので、ひさしぶりに釣友のSさんと西小川に出かけました。
朝はまだウネリが残っていると思い、当日は現地に午前11時頃ついたのですが、久し振りに渡船で出られるということで、お客さんが多く磯は満杯状態でした。
みなさん沖磯に出られる日を待ち望んでいたことでしょう。

われわれは午前中で帰る人と入れ替わりに磯に乗ったのですが、サラシがきつく、前に乗った人の撒き餌が利いているのか、コッパグレとスズメダイが沖で待機しているところから釣りを開始することになりました。
結局餌取りをかわせずに、コッパグレ数匹という結果となりました。

釣りからの帰り、今日は行けなかった、もう一人の友人のO君と連絡をとります。
私は、翌日24日は12時から用事がありますので、渡船なら近場で10時ごろあがれるところしか行けません。
O君はよく通っている、敦賀市の白木の渡船屋に電話してくれました。
24日は、朝6時出船の10時上がりで予約を入れてくれます。

24日の朝は、起きて外を見てみると、曇っていて、風もないのでそう寒くありません。
サンスイ釣具店で3人分の餌を受け取ります。
オキアミ5枚と遠投グレ1袋です。
午前10時上がりの4時間の釣りですので撒き餌は少なめです。
白木は敦賀半島の先端にある磯です。
よくグレ釣りの大会が行われる立石と丹生の間に位置します。
グレやチヌは濃いのですが、船が小さいので一度に7、8人しか乗れず、磯の数もそう多くないので、普段はあまり行きません。
最近では2年ほど前に行ったきりです。

私は敦賀に住んでおりますので、白木へ行く道は仕事でよく通ります。
休日は気分転換をしたいので、少し離れた小浜の磯や越前に行くことが多いのです。
朝5時30分に白木の港につきますと、すでに船が出ようとしています。
これは別の渡船屋さんです。
船には6、7人乗っています。
最近の白木は3軒で渡しているようです。
しばらくして、もう1軒の船も渡船を終えて戻ってきました。
「われわれは一番あとだね。乗るとこあるかな、船頭さんにはチヌもやりたいので少し早めにと連絡したけど」とO君がいいます。

何度も時計を見て、じりじりしているわれわれの前に、待ち焦がれた船頭さんは5時45分にやってきました。
「最近どうですか」と聞きますと。「ああ、グレの手のひらは入れ食いになっているよ。大きくても28cmくらいかな。チヌは見んなあ」と、のんびり言います。
スタート前から暗雲が立ち込めます。
われわれは、あと2人を乗せて5人で出船しました。
船が小さいので、岸壁で6人ほどが待つことになりました。
船は最初に三角という一番沖のチョボに向います。
ここは人気の磯ですので、誰か乗って入るかと思いましたが誰も乗っていませんでした。
O君が「Uさん乗りなよ、僕はSさんと乗るわ」というので、お言葉に甘えて、三角に乗りました。

三角はその名のとおりで、足場が海に向かって下がります。
上と下とに少し段がついていますので腰をかけることもできますが、全体が斜めです。
定員は一人の小さい磯です。
いつも人が乗っていることが多いので、私にとって三角は初めての磯です。
O君にポイントを聞きますと正面に向って釣れということです。
磯につきますと6時頃で少し明るくなり始めています。
朝の釣りということで、私は前日に仕掛けを作っておきました。

竿はいつものレイダム1.5号、道糸3号に、重めのシマノの円錐ウキO号を通し、ウキゴムで下に落ちないようにします。
道糸とハリス2号2.5ヒロを直結します。
ハリスにはハッポウ玉をヨウジで止めます。
ハッポウ玉の下は2ヒロほど取ります。
ハリはガマの小磯針7号です。
オモリはつけません。
今回はウキ下2ヒロの2段ウキ仕掛けです。
風も波もほとんどありません。

たまに弱いウネリが寄せてきます。
足元のサラシの出るところに撒き餌を打ちウキを投入しますと、サラシに押されて仕掛けは左前に出ていきそのまま前に流れます。
釣れそうな雰囲気です。
1投目は餌が残ります。
ハッポウ玉を上に40cmほど上げ、ウキゴムも上にずらしてタナを深くしてもう一度振り込みます。
足元のウキがだんだん、はっきり見えるようになってきました。
親ウキが先行しないよう、糸を張りながら流します。

20mほど流して上げますとまた餌がついています。
チヌがいるのかもしれません。
2段ウキ仕掛けではこれ以上棚を下げられないので、ハッポウ玉をはずしハリをくくりなおします。
夜明けのいい地合で、チヌがいるかもしれないので気がせきます。
ウキゴムも60cmほど上げます。
これで仕掛けは、ウキ下3ヒロのスルスル仕掛けということになります。
変更した仕掛けを投入します。

低い磯ですので、ハリスが長くて振り込みにくいので、ハリスを持って振り込みます。
足元に撒き餌を打ち、投入したウキの頭に撒き餌を軽くかぶせます。
ウキはゆっくり左前に流れます。
20mほど流れたウキがシモったように思ったあと、一気に見えなくなりました。
大きく合わせますとガッという手ごたえで大きいようです。

竿が胴まで絞りこまれますが、糸を出さずにこらえます。
魚は頭を振ります。
チヌの45cm前後かなと思いましたが手前で突っ込みます。
突っ込みをこらえて竿を立てると良型グレのようです。
ウキゴムの下が3ヒロですので竿を立てても、竿がしなって魚は水面下です。
魚は水面下でまだ動き回っています。

タモを出そうと、竿を持ってこらえたまま磯の上段に置いたタモに手を伸ばします。
このとき竿とタモを一緒に持ったのですが、大トラブル発生です。
なんとリールのハンドルがタモの網をくぐってしまったようでタモがリールにひっかかって外れません。網がからんだあたりは、まだ薄暗いのではっきりとは見えませんし、魚がまだ元気で暴れて竿が引っ張られます。
気が焦りますと、なおさらからむようです。
私はハサミを取り出し、タモのからんだ網の部分を切りました。
これも片手で竿とタモを持ちながらの作業で大変です。
なんとか竿とタモを切り離しましたが、今度はトラブルの最中に糸が緩んだのか、足元で暴れていたグレが足元の根に貼りついています。

トラブル続きで短気を起こしてはダメと自分に言い聞かせ、ゆっくり横に引きます。
すると角度がよかったのかグレは素直に出てきました。
ここでようやくタモ入れです。
タモに入れるとき、えらい白いグレやなと思ったのですが、よく見ると日本海では珍しいオナガグレでした。
これは36cmの良型でした。

日本海でオナガグレを釣るのは初めてですし、日本海側で35cm以上のグレを釣るのも初めてです。
すぐにグレをシメてハリをくくりなおし、投入します。
仕掛けがなじんだ頃ウキが入ります。
これは30cmのクチブトグレです。
その後26、7cmのグレを3枚連続で追加したところでグレのサイズが小さくなり22、3cm前後が入れ食いとなりました。

あとは遠投してもサイズは上がりません。
ウキを大きめの遊動タイプにしてウキ下5ヒロで遠投しますが、餌は残らず、たまに木っ端グレが釣れる程度です。
夜明けの30分くらいが地合いだったようです。

10時になりO君とSさんが乗った船が迎えにきました。
「どうだった20cmくらいのグレはよう釣れたやろ」と船頭さんに聞かれましたので「いい場所に乗せてもらいました。オナガグレ釣りましたよ」といいますと「オナガグレとはどんな魚や」と船頭さんが聞いてきます。

港で船頭さんにオナガグレのえらの黒い部分の特徴など説明しまして釣果を見てもらいます。
「ホーこれがそうか。黒い方はウマそうやな」と口ブトを指して船頭さんがいいます。
今日はあまり釣れないと思って気楽に釣りに臨んだのがよかったのでしょうか。
ナギで潮もよく流れたのが好釣果に恵まれたのかもしれません。
O君とSさんは29cmのグレをかしらに25cmまでを7、8枚釣ったそうです。

釣りを終えて港から40分ほどで家に帰り、道具をかたづけ車に犬を乗せて、敦賀の中池見湿地にミミズを持っていきます。
今日は子どもたちにフナ釣りを指導しなくてはいけないのです。
妻は朝から自然観察会の子どもを連れて湿地に行って、観察のかたわらトン汁を作っているようです。

妻に合ってオナガグレが釣れた話をすると「それ今日あんたが出発する前、夢にみたで」といいます。
妻が言うには「おとうさんが、太平洋側の大きな魚釣った夢見たで」と、私が出かけるときに言ったそうです。
子どもに聞きますと「お母さん、そのようなこといってた気がする」と話していました。
妻の予感があたったのでしょうか。
地元の思いがげない場所で思いがけない釣果の1日でした。

湿地で食べる昼食は、お握りとトン汁です。
曇り空ですが気持ちの良い午後です。
お握りを食べていてもオナガを釣った場面が思い出されて、自然と笑みがこぼれます。
1匹の魚は本当に釣り人を幸福にしますね。
思わず飼い犬にも、お握り半分とトン汁の豚肉をあげてしまいました。
午後からは、湿地の小川でなにも釣れなくてあきている子どもたちの前で、小さいギンブナを1匹釣って父チャンの面目を保つことができました。

昨日、明日も釣りにいくという私に向って、妻が「あんた、明日はボーズにならないよう。大根とシソ買っとくで」と言っていたことを思い出しました。
「ホンマに大根買ったんか」と妻に聞きますと、買ってあるということです。
「あんた、グレにしてもフナにしても追いこまれると力を出すなあ」と妻は申しておりました。
これでまたしばらくオカズはグレずくしということになりそうです。

  初めて日本海側でオナガグレを釣って感激の私。
  本日の釣果 オナガグレ36cm、27cmの2匹 クチブト30cmと26cm前後3匹


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