TOP 釣行記index 次のページを読む

 上野山さんからのリポート
 「カンダイのひとのし」

  音海 (福井県)
   2004/02/22

 


先月は町内会の新年会に出席しました。
新年会といっても回覧版を回す範囲ですので総勢20人ほどです。
ほぼ男女半々ですが、出席する顔ぶれは中高年がほとんどです。
宴会の席で隣の席に座った89歳の元水産高校の校長先生と話をしておりましたら、この方は鮎釣りが大変好きな方でした。
なんでも初めて釣りをしたのは、通っていた小学校横の池だということです。
いきなり大物の鯉がかかって池に落ちたと楽しく話しておりました。

そんな話をしておりましたら、むかいの席の60過ぎの方が「私も若い頃は鮎釣りはよくやりましたよ。よく行ったのは今庄の日野川でしたが、昔は尺近いのがいましたね」と話しかけてきます。
私も日野川や九頭竜川に鮎釣りに行きますので鮎の話で盛り上がります。
九頭竜川には毎年尺鮎を狙って釣行しますが、まだ29cmまでしか釣れません。

鮎釣りの話が一段落しますと斜め前の方が「今年はアジが多くて、サビキでいやというほどアジを釣ったよ。出勤前に30分ほど堤防に行けばすぐオカズはとれるで」と話しかけてきます。
そして、「タマにはグレもサビキで釣れるで。けっこう大きいで」といいます。
「どれぐらいですか」と私が聞きますと「40cmくらいはあった。もっと大きいのがかかってくるけどサビキの糸が切れてしまうんや」といいます。
私はびっくりして「えー防波堤でそんなグレ釣れるの」と絶句してしまいます。
すると向かいの人が「私は船釣りで立石の少し沖で40cmくらいのグレがタイ仕掛に何枚もかかってきたことがあるよ」といいます。

なにも南紀や紀東まで行かずとも家の近所に40cmのグレはいるのでしょうか。
新年会では、私の回りの男性6人ほどがみんな釣りをするということで、鮎釣り、船釣り、サビキ釣り、渓流釣りと話が盛り上がりました。
そしてアッという間におひらきの時間になりました。

私も89歳の老釣り師と昔話ができて、とても味わい深い時間がすごせました。
3,4年前に敦賀の川も工事をして平らになって水量が少なくなりました。
工事の前までは、川岸に大きなタモの木があり昼からはその木陰に鮎が寄るので良いポイントでしたが、その木も切ってしまいました。
タモの木の話をしましたら、老人も「あれを切ってしまったのか」と感慨深げでした。
89歳の方と話しに興じることができるのも釣りという趣味の良いところですね。
昔を懐かしむ元校長さんの顔は少年のようでした。
タモの木のポイントで竿を出した昔の思い出、せせらぎの音が元校長さんの脳裏をよぎったのではないでしょうか。

私の父親も鮎釣り、磯釣り、渓流といろいろやっていましたが、磯の大物釣りもやっていました。
石鯛を狙いに行ってよくカンダイなど釣っていたようです。
私はコブの突き出た不気味な大きい魚を父親が釣ってきたのをおぼろげに覚えています。

いつものように前置が長くなりました。
2月22日は低気圧が通過するということですが、午前中はなんとか釣りができるということで音海にまた釣に行きました。
2、3日前から2月というのに温かい日が続き、まるで4月のような陽気です。
22日も南風が吹いて4月のような暖かさでした。
自宅を4時過ぎに出て、音海のウミックさんの事務所に6時に入り名簿に記入します。
車は7,8台止まっていますが、アオリイカ狙いの人や、かかり釣りの人もいるので磯に渡るのは6人です。

南風が強いのですが断崖の下は風裏になるので何とか釣りができそうです。
「風が南から北西に変わるまでですので、昼頃までの釣りかもしれません。いちおう帰りの希望時間を書いておいてください」といわれます。
私は帰りを2時としました。
船は定刻どおり6時30分に出ます。
私は押回しの鼻を回ったところの「酢壷」(スツボ)という変わった名前の磯に一人で下りました。
風裏の磯ですので波もなくベタ凪の状態です。

今日の仕掛です。
竿はガマのレイダム 1.5号
リールはシマノのレバーブレーキの8000番 道糸3号
ハリスは2.5号を4ヒロとり道糸に直結し、釣研の小さい円錐ウキをスルスルにします。
ハリはグレメジナの6号です。

四国で5号ハリスを使った後ですので、2.5号が妙に細く思えます。
足元にオキアミをまきますとスズメダイが出てきます。
スルスルではすぐにエサがとられてしまい、仕掛が充分沈むまでエサが持たないのでウキを3Bにして、遊導仕掛にして5ヒロ弱ウキ下を取ります。
ついでに場所も左向きに変えて足元から落ち込んでいる深いところを狙います。

しばらくはエサが取られたり、オキアミのアタマがかじられたりします。
スズメダイが集まりますので、撒き餌は少なめにしてウキを投入する地点と撒き餌を離します。
8時ごろになり,少しウキが沈みます。
軽く合わせますといきなり竿が引き込まれます。
竿がのされますので、レバーをゆるめて糸を出して竿を立てます。
結構深そうな磯ですので少しは糸を出しても大丈夫と思いました。

竿が立ちましたが勢いがついたのか魚は止まりません。
私はグレなら50cmくらいではないかと思いました。
もう1回糸を出し、また竿を立ました。
これ以上出しては根ズレすると思い、力いっぱいためますと竿は満月に曲がります。
力任せの引っ張り合いですが、魚は止まってこっちを向いたようです。
魚は頭を振り抵抗しますが少しずつ寄ってきます。
引きからして、私はもしかして60cmくらいのマダイかもしれないと思いました。
グレなら完全に40オーバーの引きですので、これは魚拓でもとろうかと皮算用してしまいます。

なんとかウキが見えてきましたので,タモをとります。
さらにリールを捲くと魚が浮いてきます。
魚が茶色に見えたのでマダイかと思います。
しかし海面に浮いたのは大きなカンダイでした。
思わず脱力しますがタモに入れないとあげられません。
タモで掬うと、かなりの重量です。

レバーのリールは一人でのタモ入れのときはホントに楽ですね。
魚をタモに入れるとレバーをゆるめて糸を出します。
竿を股にはさみ、タモを折らないように垂直に持ち上げます。
釣り上げたカンダイはコブも突き出しています。
手で測った感じでは55、6cmでしょうか。重量は2kとチョットくらいのようです。
これはハリをはずして放流しました。

その後また30cmほどのカンダイと20cmほどのカンダイの子どもが釣れました。
南風はだんだん強くなり、たまに風が回りこんできて道具が飛ばされそうになります。
沖は白波が立っています。
私の場所はベタ凪ですが潮がまったく動きません。
タナも4ヒロから8ヒロまで探りますがアタリはありません。
どのタナでもスズメダイにエサをとられているうちに予定の2時になりました。

天気予報では曇りのち雨でしたが2時まで晴れてました。
2時に向えに来たの船に乗りますと、私の奥にいた釣り人も帰るようです。
横に座った人に「どうですか」と聞きますと、「風が強くて釣りにならんかった」といっていました。
カンダイを3匹釣って放流した話をしますと「もったいないですね、この時期は食べたらおいしいですよ」と言っていました。
桟橋につきますと思った以上に南風が吹いています。
南風の強いときにはあまり良い釣りをした覚えがありません。
2月に日本海で竿が出せただけでも良かったと思うべきでしょう。

カンダイの引きを俗に「カンダイのひとのし」といい、最初の突っ込みは強烈なようです。
釣れたのは55cmのカンダイでしたが、2.5号のハリス、6号のハリでもなんともありませんでした。
この前の鵜来島で、ものすごい引きで7号のハリを伸ばしていった大物はいったいどんなサイズだったのかと今更ながら思い返されます。
考えているうちにまた四国に行きたくなりました。

私は磯釣りではけっこうな確率でエタイの知れない大物に遭遇しています。
バラシも多いですが楽しみも多いです。
渓流釣りでも,クマ、イノシシ、カモシカなど「大物」に出会っています。
大物に出会う確率が多いのも運でしょうか。
今後もこの運に乗って、さらなる大物との遭遇を楽しみにしたいと思います。
たとえとれなくとも大物がかかると釣り人はワクワクしますね。


TOP 釣行記index 次のページを読む