TOP 釣行記index 次のページを読む

 上野山さんからのリポート(番外編)
 「アジ釣りでも思わぬ大物にめぐり会う」

  糠の沖 (福井県)
   2005/06/07

 


6月7日は平日でしたが、知り合いのKさんに誘われて2年ぶりに船釣りに行ってきました。
その前の週末は、Kさんと4,5人でつまらない会議に出ることになり、好天の土日をつぶしてしまいました。
月曜日の朝、突然にKさんから「明日船釣りに行こうと思うけど一緒に行きませんか。他に行く者がいないので2人きりですけど」と携帯に電話がありました。
「船を仕立てるのですか」と聞きますと、「僕の船です。エサも仕掛けもあるので竿とクーラーを持ってきてもらえばいいですよ。お金はエサ代だけで良いですよ」ということです。
土日をつぶしたところで、せっかくの誘いですので何とか仕事の都合をつけて行くことにしました。
Kさんとは初めての釣りです。
船釣りにいくのは2年ほど前にイカ釣りにいったきりです。
船釣りは年を取っても出来そうですが、磯はそうはいかないように思えますので足腰が元気うちは出来るだけ磯に行くようにしようと思っています。
昔のように船を仕立ててタイ釣りに行くほど軍資金も余裕はありませんが。

さて、倉庫の中を探して、2セットある竿とリールを出してきますと、船釣り用のリールの1個はカウンターが生きていますが、もうひとつは、バッテリー切れでカウンターの表示をしません。
まあ、釣りものはアジということですので、これで行くことにします。
竿は3.6mほどのタイ釣り用の船竿がありますのでこれを使います。

朝5時に敦賀半島の漁村に到着しますと、しばらくして軽トラに乗ったKさんがやってきます。
あいさつをしますと、「いま船回しますわ」といって手こぎボートをこいで、沖の堤防に止めてある船に向かいます。
私は砂浜にある小さな堤防で船を待つことにしました。
沖にある船はクルーザータイプで20m弱の船です。
しばらくすると、漁師の舟が堤防に戻ってきました。
船からトロ箱に移している魚は、カワハギ、チヌ、イカなどです。
ウナギみたいな魚がいましたので「これは何ですか」と聞きますと「これはハモですよ」と老人の漁師が答えてくれました。
そして、動き回る魚を網で捕まえて包丁で締めました。
ハモは歯が鋭く、これに噛まれたらケガしそうです。
包丁を刺されたハモは最後の抵抗とばかりに網の枠を噛んでいます。
その時Kさんが堤防の反対側に船を回してきました。
そして、「とうちゃん。今日は生き餌あるかな」と漁師さんに言います。
「きょうはイワシしかないわ」といって生け簀を開けますと長さ5cmほどの小イワシが50匹ほどもいます。
Kさんはこれを網で掬ってバケツに入れ、自分の船の生け簀に移し替えます。
Kさんはたびたびこの漁師さんの網に入る小魚を餌にもらっているようで、かなり親しくしているようです。
「あの漁師さんは、民宿もしていて食事もおいしいので、忘年会などでは必ず使っているのですよ。食べきれないほど料理が出てお酒も飲んで一人1万はかかりませんよ」とKさんはいいます。

道具をKさんの船に積みこんでいよいよ出発です。
船は魚探やレーダー、GPSなどが積み込まれています。
「この船はだいたい、いくら位するのですか」と聞きますと、「3年落ちの中古で買ったのですが、いろんな装置を入れると約1200万くらいです。あそこの防波堤につないでおくのにも年間10数万払わなくてはいけないのですよ。そのほかにけっこう維持費もかかりますね。海の上でエンジンが止まっては大変ですからメンテナンスはしっかりしていますよ」という答えです。
船を持つのは男の夢かもしれませんが、かなりお金がかかるようです。
Kさんは私より若く40代半ば、自分で起こした会社の社長をしておりなかなかのやり手ということです。
とても私のような安月給の身では船を持つのは無理なようです。
私の小遣いでは地磯のグレ釣りや、せいぜい月1,2回の渡船での磯釣りが精一杯というところです。

晴天で波も穏やかですので船は滑るように越前方面に走っていきます。
出している速度は時速に直すと30km程ということです。
キャビンは広くて大きなワゴン車の運転席に乗っているような感じです。
エンジンの音もそう、うるさくありません。
なかなか、快適な船です。
キャビンの椅子に座って缶コーヒーを飲みながら世間話をしていますと、やがて越前沖のいつも釣るという場所に来ました。
ここはいつも磯釣りに来る糠の少し先のようです。
遠く陸の方に干飯崎の国民宿舎が見えます。
敦賀からですと車で糠まで1時間弱かかりますが、船ですと直線ですので30分少々で釣り場につきました。
ここは水深60m程度です。
仕掛けをもらいますと5本針の胴突仕掛けです。
「一番下にはイワシをつけてください、上にはオキアミです。そしてこれを一番上につけてください」といってアミエビを入れる20cmほどのロケットみたいなものを渡されました。
これにアミエビを詰め込み、仕掛けを底に落とし、うまくいけばソイなど根についている魚が一番下のイワシに食いついてくるという算段のようです。

Kさんの船は竿掛けも着いていますし、ビヤガーデンにあるようなイスもありますのでなかなか快適です。
私は竿を2本持ってきましたので、1本は胴突仕掛けとし、もう1本はフカセにしました。
船からのフカセは、サルカンでハリスを道糸に結んで潮に任せて流すというシンプルなやり方です。魚が食うと、ゆっくりスプールから出ていた道糸が走りますので、そこが醍醐味です。
オキアミを磯と同じように船からパラパラと撒きます。
私は6号のハリスを4ヒロほど取り、グレ針の11号を結んでフカセの準備をして竿を出しました。
潮はまあまあ、越前岬方面に向かって走っていますので、フカセも釣れそうです。
ところが、2年ほどリールを放置していたためか、糸がなかなか出ません。
胴突仕掛けの方を見ながら、フカセのリールが止まっていると手で糸を出します。

「釣れましたよ」という声に振り向きますと、Kさんの仕掛けのイワシに30cmほどのアコウが食らいついたようです。
しばらくして、私の竿にもアタリがあり同寸のアコウが釣れました。
狙いのアジはなかなか釣れません。
アコウはこの後も2,3匹釣れました。
そのうち、フカセの竿の糸が走り30cm程のコダイが釣れてきます。
結構いそがしい釣りとなりました。
私は手巻きのリールですので、フカセの仕掛けは200mも流すと巻くのがひと苦労ですが、Kさんは2本とも電動ですので、カラブリの時などは電動で巻いて楽をしているようです。
年を取ると電動リールは楽そうですね。
これなら70歳でも船釣りはできそうです。

胴突仕掛けの方はエサトリが寄ったのか、オキアミはすぐにとられてしまいます。
何度か、投入をした後に私の胴突仕掛けの竿が海に突っ込みます。
竿を起こしますとかなりの引きです。
エダス5号では持たないかもしれないと思いますが、親指でリールのドラグを調整してやりとりをしながら巻いてきます。
「これは青物かな」とKさんが言いますが、そう横に走らないので青物ではないように思えます。
かなり巻きましたが、まだ魚は締め込みます。
タイなら浮いてくるのにと思いますが、この魚は海面近くでも竿が海に突っ込むほどに抵抗します。
何とかロケットが見えてきますと、底の方に青白い魚が見えます。
「タイですかね」といって仕掛けをたぐりますと、魚は良型のメダイでした。
メダイは一番上のオキアミの針に食いついていました。
Kさんがタモで掬ってくれました。
「ここで、この時期にメダイは初めてですよ」といいます。
「ヌメリがあるので、タワシでこすってからクーラーに入れてはどうですか」とKさんがタワシを渡してくれて、ホースから水を出してくれました。
釣ったメダイは60cmほどです。
メダイは姿が尾長グレと似ていて、シッポが発達していていかにも引きそうです。
目の大きさは500円玉ほどもあります。
メダイは15年ほど昔に三国沖の玄達瀬で釣ったことがありますが、その時以来です。
久しぶりに良い引きを味わいました。
私はアジ釣りでも思わぬ大物にめぐり会うなと自分で自分に感心しました。

その後は餌がとられるばかりで、一度場所替えして30cm前後のアジを4匹ほどと、40cm前後のアコウを4、5匹ほど釣って午後2時前に終了としました。
船釣りは魚のいるところに行って釣るので、さすがに色々釣れますね。

今回は久しぶりにのんびりと船釣りを楽しみました。
「また、近いうちに誘いますから」とKさんがいいますので「普段はあくせく働いているのでそう休みはとれませんよ」と答えますと、「今度は夕方狙いで4時頃出船ではどうですか」といいます。
「それならば何とかなりそうですので、また誘ってください」と返事しておきました。
海の近くに住んでいますので、夕方に天気を見て思いついたときに船で出られるのはいいですね。

帰り道は知り合いに少しずつ魚を配りながら自宅に向かいました。
自分にはこの先とても1200万の船は持てないだろうなと思い、この不景気のなか、やり手の人はいるものだなと、Kさんに感心したりしました。
お金と時間があれば、平日や夕方の空いた時間にぶらりと船を出す生活もあるのだなと、ちょっと別世界の人の人生を覗いたような気になりました。
Kさんがお金を取らないので、1日おいて彼の事務所にケーキを持ってお礼に行きました。

次回は、いつものように磯でまた大物と渡り合いたいものです。


TOP 釣行記index 次のページを読む