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上野山さんからのリポート 沖ノ島2日目、
3日目
「道糸が暴力的に引き出される」
沖ノ島(高知県)
2002/01/13、14
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沖の島2日目です。
5時に電話が鳴り食堂に下りていきます。
「今日は4人なので車で別の港まで送って、そこから船に乗ってもらいます。そのほうが船に乗る時間も短いですから」と船長の息子さんが言います。
このかたは船ではポーター役をしています。
操船は70過ぎの親父さんがしているようです。
我々は支度を済ませて車に乗り込みました。
6時15分に港に着くと、もう船は来ていました。
どうやら凪なのでかなりのスピードで走ってきたようです。
「こんな凪の日は珍しいですわ。私たちは立バエに乗りますから、大小のチョボに乗ってください。私はチョボには10回くらい乗っています。敦賀から来られたかたはもう一生乗ることは無いかも知れないのでどうぞ乗ってください。最初は船から飛び降りないとだめですが」と高知のかたが申し出てくれます。
ありがたいことです。
これも昨日釣り談議をしてうち解けたせいかもしれません。
ベタ凪の海を少し走りますとすぐに大小島につきます。
キャビンにいた15、6人の釣り客が出てきます。
みなさんどこに乗るか決めているのか相当気合いが入った顔をしています。
我々泊まり組は、乗る磯が決まっているので気楽なものです。
泊まり客にとってはなんともありがたいシステムです。
船は最初に立バエに着け、その後何組か下ろした後で大小では一番いいというチョボに我々は下りました。
チョボの大きさはその名の通り3m四方くらいで、満潮ですので海の上1mくらいしか出ていません。
チョボは大小島では一番前に突き出しております。
左後ろの大小の船付に5人、右後ろに3人ほど釣り人が下りました。
乗ってみると平たくて釣りやすい磯ですが正面に根が出ていますので右と左に分かれて竿を出します。
今日は風もなくいい天気のようです。
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大小島の船付 柏島が見える |
今日の仕掛けです。
竿 ダイコー 関西グレ3号
リール アブ アンバサダー6000番
道糸 6号
ハリス 5号 2.5ヒロ
ハリ ガマ 小磯8号
ウキ 3Bの円錐ウキ
サルカンを使って半ヒロ遊動
サルカンの上にBのオモリ
情報によりますと、チョボは青物やオナガの大物が出るということですので、万全を期しての仕掛けです。
下山さんも3号竿にハリス5号のセッティングです。
潮は右にゆっくり流れているようです。
下山さんが2投目で35cm位のグレを掛けました。
しかしその後はなかなかアタリが出ません。
9時過ぎになり私は仕掛けを変えました。
ウキを0ウキに換えウキゴムで止めます。
ハリスも4号に落としました。
下山さんもハリスを落としたようです。
しばらくして右に流れていたウキにアタリ。
ハンドルをオンにした時のカチャっという音が気持ちよく聞こえます。
これは34cmのクチブトでした。
場所が場所だけに大物かも知れないと大きい動作でやりとりしてしまいました。
「上野山さんの動きを見て、もう少し大きいかと思いましたよ」と下山さんに冷やかされます。
「ついオーバーアクションしてしまいました。大物場なのでウキが入ると50オーバーの尾長と思いこんでしまうんですよ」と答えておきました。
また、アタリが遠のきます。
たまに餌がとられますので昨日より条件はいいのかも知れません。
10時頃になり弁当船が来ました。
磯変わりでしょうか、ガマの服を着た若い釣り人が何人か乗っていますが我々の3号竿の重装備を見て驚いているようです。
特にアブのリールの私は目立っているようでした。
その後、下山さんが大きい魚を掛けまして必死にやりとりをしていますがわりとすんなり浮いてきます。タモを持って海をのぞくと茶色のサカナです。
これは三の字でした。
タモ入れの前にハリがはずれてしまいました。
「50cmくらいの三の字ですよ」といいますと、「そんな気がしました。最初は結構引きましたが、途中からは以外とすんなり上がってきました」と言う下山さんです。
しばらくしてウキにアタリが無いのに30cmほどのグレが釣れてきました。
グレがうわずっているのでしょうか。
この後はアタリがありません。
昼過ぎから潮は左前方に流れ始めましたがエサがとられません。
スルスルにしたり、遊動に換えてウキ下5ヒロにしたりと色々やりましたが餌がとられません。
2時頃になり足下にエサ取りが出てきましたので期待を込めてウキを投入しますが状況は変わりません。
2時半の終了前に後ろの磯の人が40cm弱のグレを掛けました。
やはりエサ取りが出だしてから状況が良くなったようです。
我々の本日の釣果は私がグレ34cm、30cmの2枚。
下山さんはグレ35cm1枚、三の字のバラシ1回です。
帰りに立バエの二人組に聞きますと午前中はエサも取られなかったが、2時過ぎから餌が取られ出し終了前に二人で4枚グレを釣ったということです。
見せてもらうと35cmから40cmのサイズでした。
高知のかたはスルスル釣りで石鯛らしきアタリを2回バラしたそうです。
掛かった石鯛が見えたとしきりに悔しがっていました。
我々の釣果を聞くと「あそこに乗ってそれはイカンなー」と高知のかたがおっしゃっていました。
大小の船付は4枚ほど上がったようです。
今日も全体に低調のようです。
宿に戻りますと、今日は二人増えて泊まりは6人のようです。
食事を済ませて明日乗る磯を決めます。
明日は一つバエ回りです。
岡山、高知組はビゼンバエに、今日の泊まりの2人組は一つバエに我々はウノクソに乗ることにしました。
「ウノクソはどんな感じの磯ですか」と高知のかたに聞きますと「あそこは、沖の島での数釣りの記録が出たところで、確かそのときは100匹以上釣れたと思います。
風がなければ一番高いところから竿を出して40cmまでは抜いた方がいいです。
タモが届きません。
下の段になったところに降りてやってもいいですが狭いですよ。
また、斜め後ろ向きでも釣れます。」と説明してくれました。
「二人で40枚近く釣った事もあります。もっとも連れが20枚以上釣りましたけど」と岡山の方が言います。
どうやらクチブトの数釣り場のようです。
「ハリスは3号で十分ですね。」といいますと「気を付けてください。たまに大物も来ます根だらけでなので、出してはダメですよ」と高知の方がアドバイスしてくれます。
天気予報では、北東のち南西の風で波の高さは1.5mです。
まずまずの天気のようです。
天気予報を見て我々は7時過ぎに布団に入りました。
沖の島3日目です。
5時に起き朝食を済ませ精算をします。
今回はデジカメの電池が切れてしまい沢近さんに買ってきていただきました。
いろいろお世話になりました。
朝6時20分ごろ港に渡船が来ました。
今日も風がありません。
沖の島で3日間にわたって快適に釣りが出来るのは珍しいことでしょう。
船は平バエから順に付けていきます。
いよいよウノクソにつきました。
けっこう高い磯で上からロープが下りています。
私がロープを伝って上に登り、下山さんが渡す荷物を荷掛けに掛けます。
磯の上は2m四方くらいで、沖に向かってゆるく前下がりになっています。
つるつるのスパイクの利かない岩です。
下を見ますと7mくらいあるようです。
下山さんは地向きの一段低い場所に下りて釣ることにしました。
私は沖に向かって左側のタナになったところに下りようと思いました。
タナの幅は60cmほどで海に向かって前下がりのようです。
本当に狭いスペースしかないようです。
私は少し明るくなってから、まずバッカンをおろし、仕掛けを作って縮めた竿を持って下りました。
上のタナは前下がりで釣りにくそうなので下のタナに立ちますが、ここもバッカンを置くとあまりスペースがありません。
右足はくぼみに足が入りますが、左足は若干前下がりになります。
海に向かうとすぐ背中が岩に当たります。
後ろの岩はほぼ90度です。
大物が来たら右足で踏ん張るしかありません。
いっそ上でやろうかと思いましたが、少し風があるので仕掛けが素直に入らないように思いました。
ハリスを結びながら足下にマキエを打ちます。
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ウノクソの正面 環の付いたポールにロープが結んである 左にポツンと裸島が見える 写真右上 |
今日の仕掛けです。
竿 ガマ レイダム1.5号
リール シマノの8〇〇〇番
道糸 4号
ハリス 4号 3ヒロとり道糸と電車結びで直結です
ハリ ガマ 小磯7号
ウキ 0ウキ 道糸にウキゴムをヨウジで固定しました。
3号竿で通した昨日の疲れが残っているのと、今日は釣りが終わった後に運転もありますので軽いレイダムにしました。
1投目、ゆっくり左の前にウキが流れていきます。
ウキが先に行かないように少し戻してやります。
10mほど流れたところでゆっくりウキが入ります。
合わせますと結構引きます。
下山さんにタモをお願いします。
取り込んだのは35cmのクチブトでした。
すぐに次が来るかと思いましたがしばらくアタリがありません。
30mくらい向こうのシモリ近くを流れていたウキがサラシに押されてゆっくりシモリます。
沈んだウキをじっと見ているとウキが急に見えなくなりました。
竿にギュンとアタリが来ます。
これは構えていたのでオープンにしていたベールを閉じてあわせます。
グレっぽい引きでギューンとシモリに向かって走りますが糸は出しません。
レイダムは満月に曲がります。
とれるかなと思ったときにフッと軽くなりました。
4号道糸が根擦れで切れていました。
「けっこう竿が曲がっていましたね。グレなら50cm前後じゃないですか」と下山さんが声を掛けてきます。
このころからだんだん風が強くなってきました。
後ろ向きの下山さんは風と潮が逆でやりにくいということで私の横の高い方のタナでやることになりました。
風でウキがおされるのでマキエと仕掛けが一致しないようです。
10時頃弁当船が来て磯変わりするかどうか聞きますが、タナに乗って釣ると少し風裏になりますので、ここで続けることにします。
今日はたまにエサも取られます。
天気は風が強くなり雨も降ってきました。
波もけっこう立ってきました。
先に下山さんが弁当を食べます。
さっきバラしたあたりにウキが流れてシモリ始めます。
沈んだウキが動かないので竿で聞いてみますとサカナが動きました。
竿を立てて寄せます。
最初少し突っ込みましたが糸を出すことなく寄せることが出来ました。
これは40cmほどのキバンドウでした。
これは放流です。
下山さんにタモを出していただきました。
弁当を食べている最中でしたので、雨がごはんにかかったのではないかと思うと気の毒です。
何せ垂直の狭いタナで釣っているのであまり身動きがとれないのです。
交代で私も弁当を食べます。オカズは3日間すこしずつ換えてあるようです。
雨の中の食事ですので、うつむいて急いで食べます。
波が出てきましたので3Bの遊動仕掛けにしてハリスにオモリを打ちましたがアタリはありません。
12時を過ぎて少し風が収まりました。
ゆっくりウキが左のシモリに向かって流れます。
潮の通りに流れるようです。
急いで0ウキの軽い仕掛けに換えます。
下山さんも仕掛けを変えているようです。
「なんだか釣れそうな感じですね」と下山さんが声を掛けてきます。
私は上段の下山さんに向かって「沖の島は暴力的な引きが来てすごいところでしたね。また来てみたいですわ」と声を掛けようと思ったのですが途中までしか声が出ませんでした。
何故かというと「沖の島は暴力的な引き」のあたりで、またしてもブーンという機械音が聞こえたのです。
竿を持っている左手が海に向かって引っ張られます。
「オーマイゴッド、我驚愕!!!」来たけど、間にあわんワイ。
リールがビュンビュンと逆転してそのまま左の根に走られてハリスから切れました。
それにしても10秒も目を離していないのに一瞬の油断を突いて暴力的なアタリが来ます。
「暴力的な引き」と話していた最中に来るとは、本当に敵もなかなかアジな事をしてくれます。
しかしよく考えてみますと、もしリールのストッパーがオンにでもなっていたなら、下山さんの方を見て体が立っていましたので、そのまま竿を持って海にはまるか、竿を離すしかないようなすごい引きでした。
背筋が寒くなります。
仕掛けを直して再投入します。
今度は若干腰を落とし気味にしてファイティングポーズで臨みますが、後ろの岩がじゃまで腰を後ろに落とせないので、ガニ股のような格好になってしまいます。
腰に負担が掛かります。
何でここまでしなくてはならんのかという疑問はそのときは全くありませんでした。
ただ、掛かった魚を取るということに集中していたようです。
ウキは少し沖を流れていきます。
一瞬でウキが視界から消えました。
来た!!!
合わせをくれますが竿は全く立たずに海に向かって突き刺さります。
オープンベールでスプールを押さえていた指の間からバチバチとむりやりに道糸が暴力的に引き出されます。
どないしたらええんや!!
いつベールを閉じたらええんや!!
まったくこんな経験は初めてです。
またしてもすごい勢いでサカナは沖の根に向かって突っ走って、今度は道糸から切れました。
「ちゃんとウキ見ていましたか」と下山さんが声を掛けて来ます。
「なれないオープンベールではダメですわ。ウキを見ていましたが一瞬で消えたので、もしかしたら竿に来たのが先だったかも・・・・あまりにすさまじい引きで記憶喪失になりました」と下山さんに答えておきました。
それにしても私ばかりにアタリが来ます。
下山さんは地向きに釣っていたときにダツを釣っただけです。
私とウキは1mも離れていないところを流しているのですが。
連続バラシで落ち込みそうな私です。
沖の島では大した抵抗も出来ずに敗れ去らなければならないのでしょうか。
ウキが左のシモリ付近に流れていき、朝と同じようにサラシに押されて沈み始めました。
少しウキが動いたような気がしましたので合わせを入れます。
グンと魚が底に向かって引きます。
今回は左の沖で掛かりましたのでリールが3回ほど巻けました。
グウーンと沖の根に向かって走りますが糸を出さずに耐えます。
耐えているとウキが見えたのでリールを巻きたいのですが竿を持っているのは左手です。
左足は前下がりの状態ですので、体の左に重心が掛かったときに足が滑ったら海に落ちてしまいます。
強烈な引きなので左手1本で竿を支えきれるかどうかも自信がありません。
私は馬鹿力を出して左手1本で竿を持ち素早く3回ほどリールを巻きました。
これでかなり底を切ったと思います。
すると掛かった魚は、方向を変えて左の根に向かって走ります。
私から見ると真正面沖に向かって引いています。
これではあまり右足に力が入らない体勢になります。
「下山さんこれ以上引かれたら海に落ちます」とうめくと、上から「決して糸を出してはいけません、祈るように耐えなさい」という神の声、いや下山さんの声です。
私はほとんど右足の親指のみで、魚の突進を支えるという状態に陥りました。
「糸、出したいです」
「祈りなさい」
「でも、もちません」
満月に曲がっていたレイダムが魚の下への突進で、ほとんど逆U字の状態になっています。
竿が3番から折れそうです。
風が吹いてキーンと糸が悲鳴を上げるような音を出しています。
同じ姿勢のままゆっくり時間がたちます。
膠着状態です。
わたしの選択は、この苦しい状況を抜け出すためにブレーキを離して糸を出すか、グレとしたら完全に50オーバーの引きなので、祈りの姿勢で耐え続けるしかありません。
結局、私は取りたいという欲で耐え続けました。
少しずつ竿が立ち始めました。
リールを巻きますと茶色い魚体です。
尾長の茶グレかと思いましたが巻くにつれて黄色くなってきました。
ようやく下山さんの差し出したタモに収まったのは優に50cmを越えるキバンドウでした。
「フー、よう引くわ」といってタモに収まった魚を見ると口に石鯛針が刺さっていました。
ハリには10号以上のハリスが付いています。
よう引くわけです。
このキバンドウ君は10号ハリスでも引きちぎる実力の持ち主だっだのですから。
下山さんに石鯛針を抜いてもらってこれも放流しました。
「以外と早くウキが見えたので、もしかしたらグレじゃないかもしれないと思いました。引きはバラしたやつの方が数段すごかったように見えましたよ」と下山さんが言います。
私は、もう少しで海にはまるかもしれない思いをしましたので、「そんなこと早く教えてくれ、こっちは神の声、いや下山さんの声を信じて祈りの体勢を続けたのに」と言いたかったのですが、ジョークを言う気力もありませんでした。
その後はアタリが無く時間が過ぎます。
2時20分になり私は先に道具を片づけました。
下山さんは渡船が見えるまでやっていましたが最後までアタリはありませんでした。
この日の釣果は1投目に釣れた35cmのグレとキバンドウ40cmと50cmオーバーの2匹です。
渡船に乗りますと午後4時頃に片島港に到着しました。
尼崎には12時に到着し、翌日の2時に自宅に戻りました。
「沖の島アタリ」久しぶりにすさまじい引きを味わいました。
レバーブレーキではかなり難しいように感じました。
とれないから、みんなまた行くのでしょうね。
私も体力があるうちに再度訪れてみたいです。
体力、気力が充実していないと、沖の島での2泊3日の釣りは出来ないと思いました。
さて、私は充分沖の島を堪能できましたが、下山さんはどうでしょうか。
もし心残りがあるのなら、いつでもおつきあいがしたい私です。
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