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 上野山さんからのリポート
 「大きいのが掛かった後はどうしています?」

  鵜来島 (高知県)
   2004/01/31

 


1月31日、2月1日とグレネット管理人の下山さんと四国、高知県の鵜来島に釣行しました。
最初は沖の島に行こうと打ち合わせたのですが、下山さんが予約の確認をしたところ、どこも大会が入っていて泊まれないということでした。
そこで、今回は久しぶりに隣の鵜来島に場所を変更しました。
ここは、沖の島と比べると島が小さいためか、風裏の磯が少なく少し釣りづらいように思えます。
気になる天気ですが土曜日は晴れ、日曜は晴れのち曇りのようです。

いつものように金曜日の夜に尼崎のデニーズで待ち合わせて、9時40分頃に尼崎を出発します。
今回は前日に下山さんが宮本渡船さんに予約を入れてあります。
初日がグンカン、2日目はホトバエ回りということです。
グンカンといえば60センチ級の尾長グレの狙える磯で有名ですが、人も多く乗るので、のんびりムードで釣りをしたい我々にとっては、チョット敬遠したいところです。
まあ、周辺の磯に乗ることが出来ればいいでしょう。
サンスイ釣具にリールの5号の糸を巻き直しに行きましたら、「波がなければグンカンの近くの磯でもおもしろいよ、この時期に凪ぐことはあまりないと思うけど」と言われました。

朝4時頃に宿毛港に着きますと、かなりの数の車が止まっています。
宿毛と九州を連絡するフェリー会社が倒産したということで、港には大きなフェリーボートが2船係留されています。
この不況のなか釣りに行けるだけでも幸せと思わなくてはいけませんね。

我々の宮本渡船さんは、お客さんが20人弱ということです。
船に乗ろうとして荷物を運んでいると目の前を釣り人が通り過ぎます、そのライフジャケットには「尾長グレみなと」の文字が浮き出ています。
「おおぐれみなと」のハンドルネームで活躍されている方で、この方の釣行記は参考にさせていただいています。
また私のつたない釣行記を読んでいただいて、掲示板でも会話を交わしております。
こんなところで偶然出会うとは思いませんでした。
「こんにちは」と声をかけますと向こうも驚いていました。
インターネットの力はすごいものですね。
船に乗るまでの短い時間話をしましたが年が同じということで、いっそう親しみが持てました。
みなとさんは、隣の船で沖の島に行くようです。

仕度をして船に乗り込みますと、寒くて吐く息が白くなります。
5時20分頃になり予約の人数がそろったのか船は港を離れます。
私は、ずっとキャビンにいたのですが、船がけっこう揺れるので少し酔ってしまいました。
1時間ほどして船足が遅くなります。
外に出てみますと、まず本島の白岩から着けるようです。
白岩に3人、横のスベリに2人下ろして船はグンカンに向かいます。
北西の風が強く白波が立っています。
グンカンには7人ほど下りたようです。
その後船は水島1番に向かいます。
ここで5人下りると、あとは我々だけです。
「どこに下りる」と船長に聞かれましたので「どこでもいいです」と下山さんが答えますと「チョボに着けるわ」といって水島2番のチョボに船は向かいました。
ここは水島1番とワンドを挟んで向かい合うような感じです。ただ1番は風裏ですが2番は向かい風となります。

    2番のチョボから見た水島1番             足元を狙う下山さん

仕掛けを作ろうと竿を出しますと、なんとグレスペシャル2号のトップガイドがありません。
はずれてしまって1番のガイドもろとも竿袋の中に落ちてしまったようです。
仕方がないので、今回思いついて予備竿として持ってきた20年前くらいに購入しましたガマの竿を伸ばすことにしました。

今回の仕掛けです。
竿は20年ほど前に購入したガマ磯マークU、2号ゴールド
リールも20年近く前に購入したシマノのBBX950GT
道糸5号、ハリスシーガー5号、道糸とハリスは電車結びにして釣研の小さな0ウキをスルスルにしました。
ウキゴムの下は2ヒロ半ほどにします。
ハリはグレメジナ8号です。

この古いシマノのリールはレバーがまっすぐの形状なので私にはよくなじみます。
長く使おうと2個買ったので今でも使えます。
このリールを使ったときは考えなくても自然に手が動くような気がします。
竿もリールも、15年ほど前に初めて鵜来島に来たときと同じ仕様となりました。
そのときは、5月のゴールデンウイークにもかかわらず、お客さんは10人もいなかったように思えました。
コバエで4号ハリスを切られ、夕食までの間ぶらっと釣りに行った本島のゴミ捨て場周辺の地磯で尾長グレの入れ食いにあいましたが、二人ともバラシの連続で1匹も釣り上げることは出来ませんでした。
これが私の尾長グレの初体験です。
この後グレスペシャルを買いましたので、ガマ磯2号は倉庫の片隅で眠ることとなってしまいました。

2番のチョボに上がり、マキエの用意をします。
地元のサンスイ釣具店で昼頃買って来たボイルがあまりとけていなかったので、早くとけるようにナイフで削って海水につけました。
こなごなにしたボイルが広がっていくと、オキアミの匂いが拡散しそうで釣れそうな感じです。
これもいいかもしれませんね。

釣りを始めますと向かい風でウキが寄ってきます。
ボイルをまくと、風でしぶきが自分にかかりますのでたまりません。
2投目にアタリがありました。
手応えはありません。
上がってきたのは最悪のタカノハです。
潮が動いていないのでしょうか。
「下山さんにタカノハです」と声をかけますと、ゲッというような顔をしています。

しかし、その後下山さんの竿が曲がり35cmほどのイサキが釣れます。
磯に放り上げたところでハリが外れたということです。
タナを聞きますと3ヒロ弱ということです。
しばらくして、少し沖を流していたウキがシモッていって引きこまれます。
軽く合わせますが、これもそう引きません。
上げてくると同寸のイサギです。
下山さんにタモを渡してもらって自分で掬いました。

水島1番では大きく竿が曲がっています。
後で聞きますと、ヒラマサが2回アタッタようですが取りこめなかったそうです。
下山さんは昼前に裏向きに場所をかえました。
天気図では等圧線が広がっているのに強い風が吹きます。
向かい風で寒い中がんばりましたが、この後はエサも取られずに終了となりました。
下山さんもエサが取られないと言っていましたが、2番の方で3枚ほどグレが釣れたのが見えたそうです。

      釣れたイサギ

今回は島には泊まらずに、港に近い旅館に泊まることになりました。
旅館は船から歩いて2、3分のところにある焼肉屋さんの2階です。
道具やクーラーは船に積んだままにしておきます。
イサギ2匹を磯クーラーから大型クーラーに移し変えるとき、見られていないかとあたりをうかがってしまいます。
ここまで来てこれでは恥ずかしいですが明日もありますので明日に期待です。
旅館には、宮本渡船さんのお客さんだけで7人泊まるようです。


部屋に入り順番を待って風呂に行きます。
北風に1日吹かれた後だけに、堅くなった体がゆっくり温まってほぐれていく感じがしていつもより長く湯船に浸かっていました。
風呂の後は下に降りてくださいというので下に行き、ドアをあけますと焼肉屋さんに通じていました。
「今日の夕食は焼肉でお願いします」というので、さっそく生ビールと焼肉を注文します。
他の泊まりの方は、先に食事をされているようです。

「釣りをして、気持ちいい風呂に、焼肉。こんなに楽しいことをして遊んでいるとは嫁さんには言えませんな」などと言ってどんどんビールを飲みます。
ここはタレも甘すぎず結構おいしい焼肉です。
「明日こそ釣ってボーズ脱出ですわ。スタミナつけんと」といって下山さんはおろしたニンニクもタレに入れています。
明日も釣りなので、匂いを気になしなくていいということで、私もニンニクを入れます。
一息ついたところで隣の方が「どこからですか」と声をかけてきます。
いつものように「私は福井県、こちらは尼崎です」と答えます。
いつもこうしたきっかけから、見知らぬ者同士が昔からの知り合いのようになって、話が盛り上リます。

釣りという共通の趣味を持つのはいいことですね。
釣り場では肩書きや社会的な地位などまったく関係ないので、本来の人間の姿、自分自身に帰ることができるような気がします。
ひょっとすると、半日もかけて鵜来島まで来ているのはストレスの多い日常生活から逃れて自分本来の姿を見つけるためなのでしょうか。
私にとって、わずかに残っている狩猟本能を呼び起こす、尾長グレ釣りというのは、その一手段なのでしょうか。
そうとすると、尾長グレを釣るという過程が大事なのであって、釣果はタマタマ釣れたという程度でいいのでしょうか。
あまり釣れないので、ふとそんなことも考えてみました。

声をかけてきた二人組は、50前くらいの方と30半ばくらいの方で大阪からだそうです。
今日は水島1番に乗ったそうですが一度もエサが取られないので、12時過ぎには道具を片付けたということです。
白岩に乗った方も、たしか40までのクチブトを3枚と言っていましたので今日は食いが悪かったようです。

「ところでハリスは何号です」と50前の方が聞いてきます。
「今日は5号です。下手なので5号より下げません」と答えますと「我々は6号です。ここにはこの2年ほどよく来ています。最初は3号くらいでやっていたのですが、どうにもならんのが掛かります。何とかとろうとだんだんハリスを上げていったら6号まで来ました、竿も3号です。それでもまだ50手前の尾長しか釣れていません」といいます。
この方たちも相当な尾長フリークのようです。

若い方も、「クチブトがずっと釣れていて油断していると突然でかいのが来てバラしてしまいます。なんとか正体を見たいです」と言います。
「私なんかどうにもならんのが掛かると、思わず磯の上で『こりゃどうにもとれん』と叫んでしまいます」と50前の方が言って盛り上がります。
下山さんも時々は「これはとれん」と叫びますが、このところドッカーンというアタリには見放されているようです。

その後は八丈島シモダテの話や青ヶ島の話、カンパチ釣りでエサの生きたイカが2,000円もしてエサ代が6万もかかった話などで話はつきません。
八丈のオオネにはお互い乗ったことがあるということがわかり、また話が盛り上がります。
「景気がよかった頃はよく八丈にもいけましたけどね、この不景気では」とお互い意見が一致します。
向こうはビールの後はワイン、こっちは焼酎のお湯割りを注文してピッチが上がります。

「ところで、大きいのが掛かった後はどうしています」と若い方が聞いてきます。
「私は出さないようにすることで精一杯です。いままで中途半端に出して何度切られたことかわかりません。私にとって糸を出しては地獄行きです」といいますと「昨年ベールオープンで構えていて掛かったら走らせて、止まった所で勝負してなんとか80センチのヒラマサを仕留めました。掛かった瞬間は頭の中は真っ白で、考えることなんかできませんでしたがなんとかなりました。出すなら出す、出さないなら出さないで決めておかないと、スピードのある魚では、とっさの判断は難しいでしょうね」と若い方がいいます。

「尾長でもフリーで出したら止まるのではないですかね。そこからの勝負でも取れませんか。でも、掛かった瞬間になかなか魚の大きさがわかりませんから、これも出すかどうかの判断が難しそうですね」と50前の方がいいます。
「ベールオープンでやっていて掛かった瞬間はそう大きくはないと思ってスプールを押さえながらやりとりを始めたのですが、とたんに走られて、バチバチ指の間から糸が出ていてバラしたこともあります」と若い方がいいます。

私もこれは経験済みです、みなさん同じ目にあっているのですね。
大物が掛かったときには、出すか勝負するかの判断に悩みますね。
これは一瞬で勝負が決まる尾長グレを狙う人共通の尽きない話題ですね。
掛かった瞬間に魚の大きさを判断するというのは経験しかないように思えます。
一番いけないのは、レバーブレーキで抵抗をかけながら出してしまって根に走られて根ズレで切られることのようです。

「まあ、太い仕掛ですので竿を折るつもりでやり取りすることですかね。そのためにはガマなどの高い竿ではダメですよ。心のどこかで折れたら修理代が高いだろうなどと思い、スキができますよ。安い竿で折るつもりでやったほうが思いきってやり取りできるのではないですか」と笑って50前の方がいっています。
私も一理あるなと苦笑いします。

「明日は絶対糸を出さずに竿を折りますよ。一緒に4人で一発のあるホトバエに乗りませんか」と若い方が気勢をあげます。
今回は「竿を折る」がキーワードでしょうか。
15年近く倉庫で眠っていて出番がなかった私のガマ磯2号も倉庫で見捨てられるよりは鵜来で使って折れるのは本望でしょう。
「明日は鵜来をこの竿の死に場所にしよう、竿を折ってでも糸は出さないぞ」と私も時代劇調にかたく心に決めました。
そんなこんなで大声でしゃべりながら飲みつづけるうちに、睡眠不足もあり意識が朦朧としてきました。
6時過ぎに2階に上がり布団に入ると同時に意識がなくなり、2時ごろまで一気に眠り続けました。


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