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 上野山さんからのリポート
 「ハリを伸ばされる」

  鵜来島 (高知県)
   2004/02/01

 


鵜来島の二日目です。
天気予報では昼頃に南西の風が強くなるということです。
我々は4時半に起きて着替えをしました。
焼き肉を食べてすぐに寝てしまったので胃もたれ気味で食欲はありません。
幸い旅館には朝食はついていないようです。
宿の料金は、下山さんが昨日支払ってくれたのですが、1泊と焼き肉、酒代で1人7200円ということです。

港に出ると昨日より暖かく感じます。
私は昨日キャビンで少し酔ったので、今日は外に出てキャビンの上で座っていました。
昨日話をしました大阪の二人組も上にいました。
「今日はホトバエに乗れますかね」と50前の方が聞いてきます。
「ほかの泊まりの方に聞いてきます」といって私は下におりました。
泊まりは2人連れが3組と3人連れが一組です。他の2人連れはホトバエを譲ってくれましたが、今日が3日目という3人組が乗りたいというので我々はホトバエをあきらめました。
5時30分すこし前に船が出ます。

風もなくて海は凪いでいます。
「南西が吹く前の凪ですかね。風が吹き出す昼までに釣らないとボーズかもしれませんね」と50前の方が言います。
この2人連れと話をしているうちに鵜来島に船は着きました。

            鵜来島                            水源地を回ってくる渡船

船は最初に「ドンタク」に向かいます。
「誰か下りるか」と船長が声をかけますが誰も乗りません。
その後、「高バエ」に向かいます。
二人下りようとすると「今日は凪やからどこでも乗れる。1人でいいよ」と船長が言います。
釣り客が3分の2ほど下りた後で我々は「水源地」の次の「親指」という変わった名前の磯に乗ることになりました。

ここでトラブルです。
下山さんのシマノの竿ケースと同じケースがありますが、下山さんのではないということです。
どうやら先に乗った人が間違えたようです。
竿ケースには名前を書いておかないと、薄暗い中での磯渡しではトラブルの元ですね。
とりあえず私の竿ケースだけ持って磯に上がります。切り立った高い磯ですので下山さんが先に上がり、私が中程で船から荷物を受け取り順に手渡しします。
渡船には、先に渡した磯を回って竿ケースが間違っていないか確認してくれるように頼み、仕度を始めます。

鵜来島本島 親指の磯
船の陰で左端が見えません。
後ろの地磯との間は幅30m程の水道です。

念のため下山さんに私の予備竿を渡し仕度をしてもらいます。
仕掛けを作り、マキエの準備を済ませた頃に渡船が下山さんの竿ケースを持ってきました。
今日も昨日と同じスルスル仕掛けで始めます。ハリス5号、グレメジナ8号ということでハリス、ハリも同じです。

「親指」の磯は前が深くあまりシモリも見えません。
釣り場は高くて海面から7,8mの所で釣ることになります。
タモを入れるときは1人が下の段まで下りなくてはなりません。
足場が悪いので落ちないように注意して釣らなくていけません。
マキエを打ちますと潮は沖に向かって左にゆっくり流れるようです。
高い釣り場ですので上からウキを見下ろすことになりウキが見やすく釣りやすい磯です。
風もあまり吹きません。

1投目から餌がとられます。
「餌がとられるので何とかなりそうですね」と下山さんに声をかけます。
そのうちにウキが少し引き込まれるようなアタリがありますが、カラブリします。
なにかエサ取りのアタリでしょうか。
しょっちゅうアタリがありますがハリに乗りません。

8時頃になり「少し沖を狙ってみます」と言って下山さんは足下に2,3杯マキエを打ち10m程沖に仕掛けを投入してウキにマキエをかぶせます。
しばらくして「来ました」と言う声に振り向きますと竿が曲がっています。
そう強い引きではないようです。
上がってきたのはグレです。
私がおそるおそる下に降りてタモで掬いました。
これは40センチほどのクチブトグレでした。
「ようやくグレの顔が見られました。これでボーズ脱出です」と下山さんは笑っています。

そのうち魚がウキの下にチラチラ見え始めます。
どうもウスバハギのようです。
「ウキや道糸を囓られるとやっかいですから気を付けてください」と声をかけられます。
しばらくして潮が止まり今度は右に流れます。
今度は朝より速い流れでウキが30mほど流れた後、潮の壁があるのか、ウキが引き込まれていきます。
私はウキが小さいから潜るのかと思い、一回り大きいグレックスの黄色のゼロウキに交換します。
こんな時は足元の磯際を釣るか、流れの中を釣るか迷いますね。
相変わらず、つけエサは頭だけ取られたり、無くなったりします。
右沖に流れたウキはそのまま流れたり、潜ったり、岸寄りに流れたりします。
潮の流れ、勢いがコロコロ変わるようです。

10時頃になり足元のウキが少し入ります。
合わせますと真下にかなり引きますがスピードがありません。
白っぽい魚体はどうもさっきからいるウスバのようです。
その時「私も来ました」と下山さんが言います。
二人同時に魚が掛かったようです。
二人同時にやりとりしながら魚を浮かすと、やはり私の魚はウスバハギで下山さんは40くらいのクチブトです。

ここからが大変です。
まず私の竿を下山さんに持ってもらい、私がタモを持って下に降りてグレを掬います。
上に登り掬ったグレを磯クーラーに入れハリスを切ります。
タモを持って下に降り下山さんの竿を受け取り上の岩に立てかけます。そして下山さんにタモを渡して今度は私の竿を受け取ります。
ここまでで息が切れそうです。
ようやくここでウスバのタモ入れです。
食べられるということですのでウスバは持って帰ることにします。
50センチは有るようです。

時間は11時前になりました、あと3時間弱で納竿です。
潮が流れて釣れそうな感じですが、私にはグレがなかなか来ません。
釣れるグレも40センチのクチブトですのでハリスを落としたい誘惑にかられます。
下山さんは4号に落としたということです。
私はハリを落とすことにしました。
ガマのグレメジナ8号から7号にします。

釣れそうな感じですので弁当は2時の磯上がりまで食べない事にします。
その間チョコレートと飲み物で空腹を満たします。
これなら釣りをしながらでも食べることが出来ます。
釣り師の勘でしょうか。
何か来そうな感じがします。
下山さんも弁当を食べずにがんばっています。
そしてウキをあちこちに投入して探っています。
「来そうな感じですがね」と下山さんが言います。

私の黄色のウキは相変わらず30mほど右に流れて沈んでいきます。
ウキの黄色が沈むにつれて水の中で小さくにじんでいきます。
この時間まで集中して釣れるのは昨日よく寝たからでしょうか。
私はこのときかなりウキに集中していました。
フット黄色が消えました。

来た!!!
リールはベールオープンです。
人差し指で軽く押さえたスプールからバッバッバッというすごい勢いで糸が出ていきます。
私は下げていた竿を左向き30度位の角度に上げて竿を立てる分だけの糸をくれてやるイメージで糸を出してスプールを閉じます。
この動きは日頃何回となくイメージしていた動きです。
家の中でもよく竿を立ててリールを巻く動作をして、鬼嫁から釣りに行きたいというデモンストレーションかと白い目で見られていますが、それは大切なイメージトレーニングだったのです。(ほんまか!!)

スプールを閉じて合わせると同時に竿が引き込まれる強烈な引きが襲います。
左脇をしめて糸を出さないように耐えます。
このサイズでは糸を出せば確実に地獄行きです。
初めて鵜来島に来たころの小僧の私では、すでにこの時点で糸を出して地獄に墜ちていたでしょうが、この15年間に年はとりましたが経験は積んでいます。
ただのオジサンではないところを見せなくては。

ガマ磯2号がひん曲がっています。
竿が曲がったまま持ちこたえていると魚は幸いこちらに少しずつ寄ってきます。
少しはリールも巻けます。
竿じりを腰に当てて竿の角度に気を付けて耐え抜きます。
掛かった感じではヒラマサほどのスピードはないようですが、ウキが消えたときの最初の突っ込みはかなりのものです。マダイやブダイよりも動きにスピードが有ります。

私の経験では尾長グレのように思えます。
そうなると昨年釣った50尾長よりは大きそうです。
ここまで来ると、メキシコ人のボクシングチャンピオン相手に1ラウンド目を持ちこたえた、世界ランカー10位くらいの日本人挑戦者のような心境です。

なんとか滑り出しの難関を越えました。
今回は沖で掛かったので竿が立ったのでしょう。
最初の突進を乗り越えると後は竿をのされないように用心して耐えるしか有りません。
細心の注意と、竿を折ってもいいという大胆なやり取りをしなくてはなりません。
ただ、魚が早めに足元により気味なのが気になります。
グッグッと竿を持っていきますが出さなくとも耐えられそうです。
最初の突進がすごかったのでむしろ拍子抜けのような感じです。
足元には根が出ていませんでしたので捕れる確率は高そうです。
ただ、ここまでうまくいきすぎているような気がしないでもありません。
下山さんはすぐに竿を上げてくれて横で見守っています。
声は出しませんので試合のレフリーのような感じです。

ピンと張りつめた緊張感が心地よいですが、まだ相手の力が計りきれませんので不気味です。
私は竿が曲がったままさらに魚を足下まで寄せて来てリールを少し巻きました。
ウキまではもう5,6mではないでしょうか。
捕れるかなと思ったとき急に魚が沖向きに突っ込みます。
ここで反転されてはアカンと必死にこらえますが、この力は今まで隠していたのでしょうか。
うつむきかげんに耐えている私の腰が魚に引かれて伸び気味になり、目の隅にさらに曲がって海に向かって下がっていくガマ磯2号の穂先が入ってきます。
きっと竿は極限以上に曲がっているかもしれません。
高い磯で釣っているので、魚に引っ張り込まれてバランスを崩して落ちたらどうしようとよけいなことも考えます。
幅80cm程の棚の上ですので、そう身動きがとれませんし、後ろが垂直の岩なのでのけぞって耐えることも出来ません。

このとてつもない引きではダメかもしれないと弱気になってきます。
これは60オーバーの尾長かもしれないと思います。
ここでさらに魚は強い泳ぎで沖に向いて突っ込もうとします。
竿が引っ張られて、竿の曲がりが無くなりまっすぐになりそうです。
竿が折れてもいいという気持ちをうち砕くもの凄い突進です。

ここまで家訓の「糸を出しては地獄行き」を守り通して、出さずにがんばっていましたが、海に向かってまっすぐになりそうな竿に角度を着けるために少しだけだそうと思いレバーをゆるめました。
その時竿が跳ね上がります。
糸を出して根擦れでのバラシかと思いましたがハリがついています。
よく見るとハリが開いています。
「アーやってしもた」と声が出ます。
「そこまで寄せたのですから、もうひとがんばりしなくては」と下山さんにいわれます。
今考えると、急いで寄せずにしばらく沖で泳がせて耐えた方がよかったのかもしれません。
寄せたために竿の角度がとれなくなってバラしたような気もしますが、ハリが開くとはなんという力でしょうか。

また、60クラスの尾長を沖で泳がして耐え抜くという精神力も私にはまだ有りません。
どうしても早く取り込みたくなります。
ホンマに尾長釣りは難しいですね。
まだまだ修行がたりません。
実際の時間では20秒もなかったかもしれないけど、本人にとっては1時間くらいのドラマでした。
ギューット凝縮した時間を味わえました。
50前のオジサンをこんなドキドキさせてくれた尾長さんありがとう。

       あまりに悔しいので伸びたハリを帽子に縫いつけました

その後は迎えの船が見えるまで釣りを続けましたがアタリはありませんでした。
今回の釣行では、2日間で1回のアタリを見逃さずに、いいところまでいったので良しとしましょうか。
私は、15年ぶりに鵜来島を訪れてみて、駆け出しの小僧釣り師の頃より少しは上達した気がしました。
しかし、60尾長をタモ入れというのは高いハードルですね。
私に掛かったのは60尾長ではないかもしれませんが、こんな感想を書くことをお許しください。

           2日間の釣果                    鵜来島を後にして すこし心残りです

帰りの船で、焼き肉屋で話をした大阪の二人組に聞きましたら、若いかたは「竿折ったよ」といって笑っています。
60近いアオブダイが掛かって竿を折りながらも取り込んだということです。
なかなかいい根性の持ち主です。
ちなみにPE3号にハリス6号ということでした。
グレは出ずにブダイばかり釣れたということです。

高速が須崎まで延びたためか帰りも8時間程度の運転でした。
すこし休憩しただけで、夜の12時30分頃に家にたどり着けました。
下山さんとはまた行くことを約束しました。
やはり1発のある釣り場は魅力的ですね。

家に帰ってから何度もバラしたシーンが思い出されて、ため息をついたり、「ああー」などと嘆息しておりますと「また行ってきたらええやないの」と鬼嫁が声をかけます。
「中年になってから、そんなに熱中できておもしろいことがあるのは、ええことと違うか」などと珍しく理解のあるところをみせています。
「今のうちに行かねば」と思いますが、鬼嫁に釣行記を読まれると「私も焼き肉屋につれていけ」といわれそうです。
家を出るためのマキエも大変です。

このへんで長いドタバタ釣行記を終わります。
最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございました。
また、皆様とお会いすることを楽しみにして。


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