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 上野山さんからのリポート
 「巨大チヌ」

  二木島 (三重県)
   2006/06/10

 


6月10日は「ぐれねっと」常連のY君、K君と3人で紀東の二木島に釣行いたしました。
この3人で釣りに行くのは昨年寒の時期に尾鷲の「大石のはなれ」に渡ったとき以来ですので1年ぶりです。

磯釣りは自然相手の遊びですので、何といっても天気が気がかりです。
少々の雨はなんともありませんが、低気圧の接近で大波が出て船が出なければなんともなりません。
週末に釣行を予定している釣り人は、たいてい月曜から週間天気予報を見ながら週末の天気に思いをよぎらせているのではないでしょうか。
私も週末に釣行する週は休憩時間には会社のパソコンで天気図をチェックしております。
皆さんも天気図を眺めながら「ウム」と重々しくうなづいたり、天気図がいいと心の中でこれはもらったと喜んで、PCを見ながらにやけたり(天気がいいだけで釣れたと思うところが釣り人の浅ましさか?)、沖縄方面にある低気圧が日本海を通るのか、太平洋を通るのか、「低気圧の奴どっちいくんか、はよ決めんかい」などと天気図に向かって叫んだりしているのではないでしょうか。
この姿は嫁には見せられられませんな。
天気図のチェックも木曜あたりになると熱が入ります。
週末に高気圧が日本を覆う予報が出たりしても、「物事そんなにうまくいくわけはないわ。
高気圧が予報より早く抜けて、前日釣りの仕度をしている間に予報がかわって低気圧が発生するもんや」などと疑心暗鬼となってしまいます。
 
さて、木曜日の朝の天気予報ですがパソコンで天気図を見ますと絶望的な予報です。
週末は太平洋側、日本海側共に低気圧があります。
かつ、尾鷲の予報は金曜日の波は5m!!とあります。
いったんは絶望的な気持ちになりましたが、「もしかして低気圧が早めに通過して北西の風が吹いたら波は早く落ちるかもしれん」などと思い未練がましく何度も天気予報をチェックしておりますと願が通じたのか、金曜の波は5mのち3m、土曜日は2.5mのち2mと波がおちます。
釣りに行きたい一念岩をもくだくです。
これで何とか、土曜日は無理でも日曜日は出来そうです。
思わず航海の神様、地元の北陸総鎮守「気比神宮」にいつも気使ってくれておおきにやで、と心の中で手を合わせます。

早速金曜の昼休みにY君と連絡を取りますとK君は土曜日しかいけないということです。
夜の天気予報を見て、土曜の朝から行くか、午後からの半夜にするか決めようということとなりました。

夜の9時にY君と連絡が取れますと「マルヒサ渡船」は朝の客は受け付けているが磯に出てみないとわからないということです。
波の落ちかたがわからないので、結局半夜で行くこととしました。
 
朝3時に起きてワールドカップのドイツ戦最後の場面を見て、4時過ぎに家を出て6時過ぎにY君の自宅により、K君を乗せて尾鷲に向かいます。
餌の解凍を尾鷲のエサ屋さんに頼みましたらボイルはMしかないということですので、道中のエサ亀でLのボイルを1枚買います。

11時に出船ですので10時30分に二木島到着を目標で家を出ましたが、エサ亀では11時にぎりぎり間に合うかという時間になっていました。
大急ぎで尾鷲のエサ屋にたどり着きますと、なんとガラス戸に「タバコ買いに行きます。しばらく留守にします」と張り紙があります。
「こら、オヤジ商売やる気あるんか。これでは間にあわんかもしれません」とY君がいいます。
とりあえず着替えをしようということで店の前で着替えをして磯靴をはいたところで店の親父さんが戻ってきました。
「イヤーまったかね。オッ解凍したボイルを出そうと思ったらカギがかかっとるわ」などといってのんびりしています。
こっちは船に間に合うかどうかでいらだって普段の2倍くらいの早さで時間が流れているのに、この親父さんのペースはスローモーションのように見えます。

そそくさとお金を払って二木島に向けて出発しますが、どうもこの分では到着は11時ぎりぎりですので賀田を過ぎたあたりでK君が渡船屋に電話を入れます。
電話をしている途中でトンネルに入り電話が切れてしまいました。
「気をつけてきてくれまではわかりましたが。ウネリがどうこう言っていましたが紀州弁でよくわからんかったです」とK君が言います。
「そりゃウネリが落ちたいうことやろ」とK君が言いましたが二木島の手前から磯を見ますとかなり白波が見えます。
「こりゃ湾内磯かもしれませんよ」と少し暗いこえでY君が言います。
なんとか11時10分前に港にたどり着きますと、乗船所にはかなりの釣り人が見えます。
大急ぎで竿ケースと磯クーラーを持ってフウフウ言いながら乗船所にたどり着きますと、ちょうど皆さん乗り終わったところでしたので、そう非難の目で見られずにすみました。
船は11時に港を出ましたが話を聞きますとどうも朝はウネリがきつくて渡さなかったようです。

   お世話になった二木島マルヒサ渡船

湾内磯で以前に乗りました「ガマの口」もかなり大きなサラシが出ています。
船長は、表の磯は出てみないと渡せるかどうかわからんと言っています。
まず船は「ガマの口」の次にあります「日の丸」に着けます。
私がY君にどうするという目を向けますとY君も少し考えているようです。
考えている間にここは一人の釣り人が手を上げておりました。
「次は松の下。誰かおらんか」と船長が言いますのでY君が「3人でおります」と申し出ました。
ここは前回Y君が「ぐれねっと」管理人さんと釣った場所です。

我々は「笹の島」裏向きの「松の下」という磯に渡りました。
ウネリが横から入ってきて船がかなり上下しますが、舳先にいた釣り人が手伝ってくれてスムーズに磯に渡ることが出来ました。
この渡船屋さんは常連さんがとても親切ですね。
「船着でも良いけど、上を回ってもう少し先でも良いよ」という船長が声をかけます。

Y君が「以前ぐれねっと管理人さんと釣ったのはもう少し先です」というので我々は重い荷物を手渡して「笹の島」の裏側を上り下りして30mほど移動しました。
もうこれだけで一仕事終わったかのような気持ちになります。
ドっと汗が噴き出します。
普段から運動しないといけないなと思いますが、家に帰るとすぐに忘れてしまいますね。
Y君とK君は二人で先のほうの磯に行き、私は手前から竿を出すことにしました。

               仕度をするY君とK君 足元は大サラシ

足元は大きなウネリが来てサラシで真っ白になります。
とりあえずしばらく波の状態を見てからバッカンを置く場所を決めます。
私も仕掛けを作ります。
竿はいつものレイダム1.5号、道糸は3号、ハリスも3号とし直結とします。
ウキは釣研の5Bのウキを60cm程遊動にしハリスにガンダマ1号を4ヶ着けました。
ハリはグレ針8号です。
ウキ下は3ヒロ弱でスタートです。
仕掛けを振り込みますとアットいう間に餌がとられます。
仕掛けがなじむまでにウキ止め糸が走りますので仕掛けを上げますと小鯖が釣れます。
それではとサラシの中に仕掛けを入れますと手のひらのオナガが釣れてきます。
すぐに餌がとられますのでウキの遊動を10cm程にしてタナを2ヒロにしますがウキが入って釣れてくるのは小鯖か小オナガです。
ウネリは落ちるのかと思っていましたが、時折大きなウネリが押し寄せ私は頭からシブキをかぶりました。

この大ウネリでは、ましなグレが掛かるとタモ入れは大変だろうと思い私はカッパを着るついでに竿もガマのグレスペシャル2号に替えました。
時刻は4時前になりましたが、状況は変わりません。
エサを入れた瞬間に餌がとられるか小魚が掛かりますので打ち返しの連続の釣りになります。
しかし、打ち返さないことには大グレが食い出す時合いがわかりません。
疲れてきたので用意したアンパンを食べて10分ほど休憩します。
向こうの二人組も飲み物を飲みながら休憩しながら釣っているようです。
釣りを再開して2投目、足元のサラシがゆるんだときに投入したウキが沈んだ瞬間に竿がひったくられます。
これは小オナガと違うと思い竿でためますが竿が2号ですので魚はすぐに水面に上がってきました。
サラシの中に上がってきたのは38cm程のグレです。
向こうで見ていた2人が掬おうかというようなゼスチャーをしましたが、これくらいは抜けると私は手を振って断りました。
私はウネリが上がって来たときに合わせてグレを抜き上げました。
グレは38cm程で産卵が終わったのかスマートな魚体でした。
このとき向こうの2人組もシブキを頭からかぶり、ウネリが強くなってきたので道具をかたづけてこちらに移動してきました。
私も足元を波が洗うので少し気味が悪い気がしてきました。

「上野山さん。グレが釣れたのでこのままここでやりますか。船頭は船着きでも良いよといっていたので船着きに移動しましょうか」とY君が聞いてきます。
私は安全が一番と思い竿をしまい船着きに移動することにしました。
Y君とK君は私が竿を出していた岩から一つ高いところから釣ることにしたようです。
私はまたヒイコラ言いながら磯バックを持って磯を上り下りして船着きに移動しました。

船着きはさっきのようなサラシはなく、寒の時期のような穏やかな波の釣り場です。
下を見ますと足元から切れ込んで深そうです。
船着きはウキを見下ろすような感じで釣りますので、かなり釣りやすい場所です。
ただ、すこし高いのでタモが入れにくそうです。
ここは足元狙いかと思いボイルをパラパラと磯際にまき仕掛けを振り込みます。
今度はウキをツインセンサーに替えてタナを3ヒロとしました。
ウキはゆっくり磯際沿いに先端のY君のほうに流れます。
1投目はエサがついています。
ウキ下を半ヒロ下げてエサを付け替えて振り込みます。
ウキが際から離れないように、ウキ止めが落ちるまでは竿先でウキを操作します。
仕掛けがたった頃合いを見計らって、少しずつリールから糸を出してウキを流します。
ウキが5mほど流れたときに少しはいります。
「オッあたりか」と見ますと、ウキはスーとそのまま入っていきます。
半信半疑で軽く合わせますと、いきなり竿がキュンとのされて道糸が磯に擦れてウキの上から道糸が切れてしまいました。
座って釣っていたために何も出来ずにバラしてしまいました。

Y君に「バラシター」と怒鳴ってから仕掛けを作り直します。
急いで仕掛けを作り直し、ボイルを撒いてもう一回来ないかなと仕掛けを投入します。
同じようにウキを操作し仕掛けが立ったときにウキが入ります。
今度は立って釣っていましたので、やりとりが出来ました。
浮いてきたのは40cm程のグレです。
これは自分でタモを入れます。
釣れたグレをシメて急いで磯クーラーに入れます。
針をくくり直して仕掛けを投入するとまた足元でウキが沈みます。
これも難なく上がってきたのは45cm程のグレです。
グレスペシャル2号ではクチブトグレには竿が強すぎますね。
無事にタモに入れますとK君が横で釣らせてくださいといって引っ越してきました。

横に並んだK君がマキエの仕度をしていますとまたウキが入ります。
軽く合わせますと、今度は竿が立ちません。
グレスペシャル2号が満月になります。
久しぶりの大物の当たりです。
私はK君側に走っていき体を磯に着けて竿をつきだして、なるべく魚と竿のあいだで角度がつくようにしてやりとりをします。
こらえ切れずに糸を2,3回出しましたが魚の走りは止まりました。
そこからは2号の竿とハリス3号にものをいわせて強引に魚を上げました。
クチブトなら50オーバーと思われましたがどうも上がってくる魚は白く見えますし、観念したように最後はあまり引きません。
海面に横たわったのは大きなチヌです。
K君に声をかけて息を合わせてタモに入れます。
タモに入ったチヌを手で計りますと60cmはあるようです。
私が日本海側で釣りましたチヌの記録は53cmですが、ここでは外道と言うことで写真を撮ってリリースすることにしました。
産卵が終わったためかよく引くチヌでした。

         思いがけなく釣れた60cmのチヌ。 これはリリースしました。

K君も釣り始めましたがリリースしたチヌが魚を連れていったのかしばらく当たりが止まりました。
10分ほどしてまた私のウキが入りました、合わせますと今度も強烈な引きですが耐えていますと魚が沖に走りましたのでこれはグレでは無いと思いました。
しばらくして竿をたたく引きになり上がってきましたのは45cm程のサンノジでした。
サンノジの引きは強烈ですね。
時合いでしょうかY君も40cm程のクチブトグレが釣れたようです。
ハリス切れも1回あったということです。
その後は時合いが終わったのかエサトリに餌がとられるようになり終了時間となりました。
K君はタイミング悪く、時合いの最中に移動したような感じとなり魚を見ることは出来ませんでしたが最初の場所で30cmほどのイサギを1匹釣ったということです。

    釣れた40cmのぐれと60cmのチヌ タモの枠はサンスイで買ったチタン製です

港に帰りますと50cmのグレを釣っている人もいましたが、ウネリでいい磯には渡れずに、今ひとつという釣り人も多かったようです。
今回は息子さんが沖で仕事をしているということで、年配の方が検寸した魚をデジカメにおさめておられました。
私はK君にはグレを1枚持って帰ってもらいました。
K君は魚の取り込みや、磯際の釣りかたなど参考になったといっていましたが、私もヘボ釣り師ですので参考になったかどうかはわかりませんね。

          私の釣果                       乗船場
道具をかたづけ、尾鷲で食事をして12時頃に大津に着き2時前に自宅に着きました。
自宅に戻りますと、おきていた鬼嫁がサンスイで買ったタモはうまく使えたかと聞いてきます。
今回は枠が回らなかったので、一人でグレを取り込んだ話や60cmのチヌをリリースした話しをしましたら「そんな大きいチヌやったら3日はオカズになったのに」と鬼嫁らしい感想を言っていました。

鬼嫁と子供は私が帰ってからしばらくして寝ました。
私はさっとシャワーを浴びてからビールを飲みながらワールドカップを見ました。
家を出たのは土曜日の朝の4時過ぎで家に到着したのは日曜の朝の2時でしたのでなんとも長い1日でしたが、充実した時間を過ごすことが出来ました。
ビールを飲みながら試合が中断したときなどには、巨大チヌの引きなどを思い出して一人でにやけてしまいます。
大ウネリのなか磯釣りをしてグレを釣って、家族の待つ家に帰りビールを飲んでリラックスするという中年オヤジのささやかな冒険の1日でしたが、あとであの日は良かったなと思い出されるような1日でした。
70歳くらいになって、ぐれねっとさんに投稿しました釣行記を読みかえすことがあればきっといい日だったに違いないと思い返すことでしょう。
サッカーを見終わった後も一人でビールを飲みながら強い魚の引きを思い出して、また行こうとにやける私でした。


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