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 上野山さんからのリポート
 「悪天候の1日目、いとうさんに感謝」

  武者泊 (愛媛県)
   2012/02/15

 


2月15、16日と平日にサンスイ釣具の若旦那、以下M君と四国に釣行しました。
この時期、悩むのが天候です。
北西の風が強いと鵜来島、沖ノ島、中泊などはそう釣る場所がありません。
二人とも仕事をしていますので、なかなか天気を見てこの日に行くというわけにもいきません。

1週間前に週間予報を見て、14、15日あるいは、15、16日と決めていたのですが、14日からは低気圧の通過に伴って雨が続きますので、2日とも雨の中の釣りとなります。それではかなわないという事で、釣行日は15、16日と決めました。
天気予報では、5日は曇り時々雨、16日は曇のち晴です。
14日に接近する低気圧が通過して冬型になるという天気の流れです。
事前の予報では低気圧がそう大きくはないので風もそう強くはないという感じでした。
釣行前日の昼にM君から電話があり「12月に釣行しました中泊の渡船屋に電話を入れたけれども、夕方にならないと出船できるかどうかわからないそうです。明日は北東の風ということで乗る磯が限られそうです。また夕方に渡船屋に電話します」ということです。

これはもし渡船が出なかったら、せっかく会社を休みにしたのになんとも残念です。
私は、グレネットの掲示板に、いとうさんが北西の強風の中、釣果を書いていたことを思い出しました。
いとうさんが利用しているのは武者泊のいろは渡船です。
早速ホームページを探しますと、いろは渡船が出て来ました。
私は会社のプリンターでアクセス地図をコピーして電話番号を書いておきました。
私は万が一、中泊の船が出ないならば2番手でいろは渡船に電話しようと思いました。

夕方5時すぎにM君から電話です。
「中泊ですが、拝んでから電話をしましたが、明日は風とウネリで船は出ないそうです。今回はやめますか」と元気がなさそうです。
私は「ぐれねっとのいとうさんが、武者泊のいろは渡船で北西の強風の中釣りをしているので一度あたってみます」と言い、いろは渡船に電話をかけました。

「福井県からですが明日は出ますか。2名ですが」と電話にでられた船長と思われる男の人に言いますと「二人なら出ますよ」ということです。
念の為にこちらの携帯電話を言いましょうかといいますと「明日は出られますから結構です」という力強い言葉です。
「おおこれは、神の助け」とばかりにM君にいろは渡船に予約した旨を連絡します。
M君は「あすの強風の中をでられる船があるのか」と半信半疑ですが、とりあえず出るというからには行こうということになりました。

私は予約の時にちゃっかり「常連のいとうさんの知り合いですのでよろしくお願いします」と渡船屋さんにいいますと「おお、あのいとうさんの知り合いかね」と、とたんに打ち解けた感じになりました。
突然の福井県からの電話では、船長もどうしてこの渡船屋に電話してきたのか不思議だったことでしょう。

いとうさんのおかげでなんとか、竿を出すことができそうです。
思えばいとうさんとは梶賀で1回だけご一緒しただけですが、しょっちゅう掲示板でやりとりをしていますので、知り合いといっても許してくれるでしょう。

敦賀を出発するのは6時30分としていましたので、なんとか出発1時間前に渡船屋さんが決まりました。
私はいそいで食事を済ませて、忘れ物がないか考えました。
まあ、二人ですので何か忘れてもなんとかなるでしょう。

少し遅れて7時前にM君が迎えにきました。
ボルボのワゴンに付けたルーフキャリアに竿袋と磯靴を入れます。
M君とは、「あと何年四国に通えますかね」などと言いながら一路京都東インターを目指します。
京都東インターから高速を乗り継いで、宇和島をすぎて武者泊手前の福浦港についたのは2時半ごろです。
交互通行できないような細い道を何ヶ所か通り、いろは渡船の看板を見つけて一安心です。
船の前で待っていてくださいということでしたので、港の渡船の前で駐車します。
いろは渡船の船は思ったよりも大きくて沖ノ島の船くらいありそうです。
船の正面にDAIWAのロゴが大きく入っています。
私は寝袋にくるまり、M君は毛布にくるまって横になります。
外は雨が止まずに、強い風も吹いています。

5時40分に目覚ましをかけた携帯電話の音で目が覚めました。
外はひどい風と雨です。
「寝ていてすごい風で車が揺れたよ」とM君が言います。
横殴りの風に雨が混じって嵐と言ってもいいような日です。
こんな天気の日に本当に船が出るのか心配です。
周りには車がとまっていないので、今日は我々2名だけのようです。

雨の中支度をして車の中で半信半疑で待っていますと、6時10分頃に傘をさして船長がやってきました。
車から出て挨拶をしますと「今日はどこか上がりたい磯はありますか」と聞いてきます。
私はこの時まで本当に船が出るのだとは思っていませんでした。
船長が「今日は風が強いしこんな天気だから止めとこうか」といっても仕方がないという思いでした。
「できれば風の当たらない磯がいいです。グレ釣りに来ているので、グレが狙える場所でおねがいします」と言いますと、「前回グレが釣れた場所に行こうか」と船長は言います。
やがて6時15分になりエンジンをかけて船は出発します。
「お客2人だけでもここは出てくれるんやね。でもこんな風の中では港を出たところの磯じゃないの。鵜来島では何度も港の前で竿を出しましたよ」とM君はいいます。

船はしばらくスローで走って福浦の湾を出ます。
振り返りますとすぐ後ろに渡船と思える船が2隻走っています。
我々の前にも渡船が一隻走っています。
こんな悪天候の中でも同好の士がいるという事で、私はなんか少しほっとしました。
我々2人は群を抜いた釣りバカかと思いましたが、ほかにも好きな人はいるようです。
やがて船は武者泊の港を過ぎてしばらくして湾になったようなところに向かいます。

「ここなら風が当たらんよ。前回もグレが釣れていたよ」と船長が言います。
この場所は後で調べましたら「ガマゴウラ」という場所です。
大きな湾の出口の様な場所です。
ガマゴウラは大きな地磯で並んで釣れば5人ほどでも竿を出せます。
「船着きと奥の方でも釣れるよ」と船長が言います。

我々は荷物を降ろして風が当たらないのでホッとしました。
雨は仕方がないとしましても、この時期雨の中で風に吹かれると体温を奪われるので本当に寒修行の様な釣りになってしまいます。
2人並んで釣った方がマキエがきくだろうということで、我々は二人並んで少し高くなった船着きで竿を出すことにしました。

風もなく、波もほとんどないので若狭のチヌ釣り場の様な感じです。
私はいとうさんがここでは「怒バラシ」があるというので、ハリス5号でスタートしようかと思っていましたが、どうみてもこの穏やかな磯では、すごいバラシは無いと思いました。
ですが万が一オナガが来るとも限りませんのでハリスは4号としました。

今日の仕掛けです。
竿はいつものグレスペシャル2号に、道糸4号、ハリス4号、グレバリ9号としました。
ハリスと道糸は直結とし、久しぶりに小ぶりの黄色の0ウキを道糸にヨウジで固定し、30cmほど下に黄色のナビウキをつけました。
今回はオモリ無しの完全フカセです。
たまにはこの軽い仕掛けもグレ釣りらしくていいですね。
いとうさんが前回3ヒロで釣っていたというので私もウキ固定の3ヒロとしました。
3ヒロの釣りに備えて0ウキとヨウジもあらかじめ用意してきました。
雨で曇っていますので黄色のウキは見やすかったです。

足元にマキエを打って第1投です。
足元の磯は切れているので釣りやすい場所です。
ウキを足元から3mほどのところに投入します。
小潮周りで、朝6時過ぎが引き潮ですので丁度これから徐々に潮がこんでくるという状況です。
潮はゆっくりと左に流れます。
0ウキの下のナビウキを見てウキが先に流れないように仕掛けを戻しながら流します。
しばらくして仕掛けを上げますとエサがかじられています。
M君も3ヒロでやってエサがとられると言います。

雨は時々小降りになったりもしますが、ときには大粒の雨が落ちてきますのでカッパのフードはかぶったままです。
気温が高いために雨のなかの釣りでしたがそう寒くはなかったです。
時折風が回り込んできますが、気になるほどでもありません。
道糸が竿に張り付くことを除けば、風がなく、穏やかな海でゆっくりと潮が流れますので釣りやすい天気でした。

何度もウキはゆっくりと沈みますがあわせてもハリ掛かりしません。
これはエサトリのアタリでしょうか。
足元に打ったマキエにはフグやら、20cmほどの何か茶色い魚が出てきます。
エサをとられ続けるので私はウキ下を少し上げて2ヒロ半としました。
冬にこんなに浅いタナで釣りをするのは初めてかもしれません。

8時前になり「オッ来た」といってM君が魚をかけました。
割合とすんなり浮いてきたのは40cmほどのグレです。
「このグレは太っているわ。持って帰って食べてもおいしそうや」と取り込んだM君が言います。
そのすぐ後にゆっくり沈みかけたウキが、スーと沈む速度が速くなりましたのであわせますと、久しぶりのグレの手ごたえです。
私に釣れたのは36cmほどのグレでした。
これは自分でタモを入れます。
これも太って丸いグレです。
2ヒロ半でグレを釣るのは本当に久しぶりです。

その後M君と35、36cmのグレを1匹ずつ追加します。
打ったマキエには足元でフグがウロウロしていますが、偏光グラス越しによく見ていると底の方に沈んだマキエに青い魚が群がっています。
「底の方に見えているのはグレじゃないですか。このサイズが釣れるとなると今日は数釣りになるかもしれんな」とM君が言います。
よくウキは沈むのですが食いが浅いのかお互いに2匹ほど針ハズレします。
このサイズではハリス2号くらいでも充分ですが、釣り過ぎても持って帰るのがかなわないので、我々はハリス4号のままでやっていました。

お互い交互に魚を追加して10時前にはM君が3匹、私は4匹釣りました。
どれも35cmから40cmまでの魚です。
私は足元でかかった魚を磯の前に出ずにやりとりして、少し魚が大きかったのか足元の根に張り付かれて引っ張ったひょうしにハリスから切れたりもしました。
これは私の油断でした。
魚が釣れ続けると、どうしてもやりとりが荒くなってしまいますね。

お昼になり交互にコンビニで買ってきた食べ物を食べますが、お昼近くになるにつれてグレのアタリは無くなってきました。
こんなことならば、もう少し丁寧に釣っておけばと思いますがこれは後の祭りです。
アタリが遠のいたらM君は眠くなったといって、雨の中フードをかぶって磯の上で寝転んでいます。

私もご飯を食べたら眠くなりましたが、少し休憩して飲み物を飲んでハリを8号に落としました。
ウキ下も少し下げて3ヒロに戻しました。
休憩して元気が出ましたので釣りを再開します。
時刻は12時半頃です。
潮はゆっくり左に流れたり止まったりです。
足元の磯際にウキを投入しますと少しシモッたウキがスーと入ります。
合わせますと、これはよく引きます。
ですが2号の竿で、ハリス4号ですので強引に竿を起こしますと、海面に浮いたのは、少し大きい47cmほどのグレでした。
これも自分でタモを入れます。
20分ほど寝て起きてきたM君も35cmほどのグレを1匹追加します。
続いて足元にウキを投入しますと、仕掛けが馴染んだ頃にすごいスピードでウキが入ります。
これはグレでは無いなと思いながらあわせますと、あわせた瞬間に仕掛けが飛びました。
ハリスを見てみますとハリがありません。
竿に魚の重さが感じられる前に仕掛けが飛んだ感じです。
ハリスはザラザラにはなっていずにスパッと切れたような感じです。
「怒バラシ」といいますか、このすごいバラシではハリス5号でも一瞬で飛びそうに思われました。

その後お互いに1匹ずつ36、37cmほどの中型グレを釣りましたが今日はもういいという事で釣ったグレは放流しました。
今日はM君4匹で放流1匹、私は47cmを頭に5匹で放流1匹という事で、二人あわせて35cmから47cmまでを11匹釣りました。
私はこのところずっとグレが釣れなかったので、久しぶりにグレが釣れて大いに満足でした。
今回は久しぶりにウキ下2ヒロ半というグレ釣りらしいグレ釣りができて楽しかったです。
M君とは明日も風が強そうなので引き続き、いろは渡船にお世話になろうと相談して決めました。
やがて2時になり船が迎えに来ました。
今日は釣りをしている間ずっと雨は降り続いていました。

港に帰りますと船長が「今日は釣れたかね」ときいてきます。
2人で11枚釣ったと報告して魚を見せますと、船長は乗り場の横の検寸台で一番大きな魚を計ってくれました。
私の釣った魚は締めて氷で冷やしていましたので少し縮んで46cmでした。
「明日も船が出るのでしたら、釣りたいのですが」と言いますと「船は出るよ」という事です。
「仮眠所で寝てもいいですか」と聞きますと「いいですよ。いつもいとうさんは温泉に行って来てから仮眠所で寝とるよ」という事です。
船長は40過ぎくらいの温厚そうで人当たりのいい人です。
道具を片付けて明日の分のエサを入れた磯クーラーは取られる事も無いだろうという事で渡船の前においておきました。

服を着替えると、我々は宿毛方向に走り一本松温泉で汗を流しました。
釣りのあとの温泉は疲れを癒しますね。
温泉に入りますとなにか気が抜けたように感じになってフーとします。
磯の上で釣りをしている間は、やはり何か気が張って緊張しているのかもしれませんね。
私は湯船に浸かりながらバラシのシーンを思い返しますが、どう考えても竿が曲がる前に糸が切れたようにしか思えません。
リールのドラグもジともいいませんでした。
しかしそんなに簡単に4号が切れるものでしょうか。
何かグレではない特大の魚が足元に居るのかもしれません。

我々は温泉を出て、道を戻ってコンビニの横の「なにわ」という店で食事をしました。
私は前回頼んだのと同じ「御庄カキフライ定食」でM君は「とんかつ定食」にしました。
M君は今ビールを飲んだら何も出来なくなるので、仮眠所についてからビールを飲むといっています。
ここの料理はおいしいので値打ちですね。
定食についてくる刺身も中々新鮮です。
店を出るときに大きな水槽があるので覗いて見ましたら、タイの下に大きなクエがいました。

仮眠所に戻って下山さんにいとうさんの電話を教えてもらい、いとうさんに電話をかけました。
いきなり電話をかけましたので、いとうさんは少しビックリしているようでした。
いとうさんの知り合いという事で、いい磯に乗せてもらって釣れたと言いますと電話の向こうで笑っていました。
「今日、バラシはなかったですか。ガマゴウラのアタリは深くて巨大な化けモンみたいなんがいます。強烈なヤツは足元を竿1本から2本でやると来ますよ。明日は千畳辺りに行けると面白いと思います。明日もがんばってください」と言ういとうさんです。
M君はそんな巨大な魚が竿2本で来たらそりゃどうにもならないなと言います。

我々がビールを飲んでいると、船長がやってきて煙草を吸います。
「私は上の住居ではタバコが吸えないのでここで吸うんです」という船長です。
「明日はお客さんがいますか」と聞きますと「明日はもう一組いますよ」という事です。
北西の風が強い時、ここは数少ない釣りができる場所だと思うのですがそう釣り人は多くないようです。

船長とはしばらく世間話をしました。
「いとうさんとは同じ職場ですか」と船長に聞かれて、いとうさんの知り合いと名乗ったてまえ、これはマズイと思い「いや、いとうさんとは離れたところに住んでいますが、しょっちゅうネットで交流していて、釣果情報を交換しています。いとうさんとは以前は竿を出した事もある知り合いです。この渡船屋さんを知ったのもいとうさんがネットで紹介されたためです」と汗をかきながら説明をしますと、船長は「あの人にネットに投稿するような趣味があったんですか」と妙に納得しています。

「以前は北西が強い時は釣り人を磯に下ろして港に戻ってくると、他の渡船区で船が出なかったという釣り人が港でまっとったこともありましたが最近はないね」という事です。
ここは親子2代で渡船をやっているとのことです。
バブルの頃は釣り人も多くて2番船も出たという事ですが、最近は釣り客も減っているという事です。
「うちの船はこのアタリで一番速いのですがこれだけ不景気になるのでしたら、もう少し小さい船でエンジンも小さくてもよかったかなと思いますよ」と船長が言います。これは実感がこもっていました。
少しでもお客さんをつなぎとめる為に、悪天候のなか2人でも出してくれたのかなと思いました。
まったく、リーマンショック、震災とこのところずっと不景気が続いています。
失われた20年を過ぎてもまだ不況が続いているというのが私の実感です。

やがて船長はタバコを吸い終わると上に上がっていきました。
M君はもう少し飲むという事で持参したウイスキーを水で割って飲んでいます。

M君と2人で、こんな悪天候でもグレが釣れたのは出来すぎと話し合います。
「今日は竿が出せるだけでもいいと思っていました。まったく、いろは渡船を紹介してくれたいとうさんのお陰ですね」とM君が言います。
私もいとうさんの投稿で、いろは渡船が紹介されていなかったら今日は四国に来ていなかったと思いました。
3ヒロスタートで手際よくグレが釣れたのも、いとうさんが3ヒロで釣ったという投稿のおかげです。
「ほんまにいとうさんには感謝ですね」と言って、酔っぱらった二人はいとうさんの今後の釣り人生に幸あれと合掌するのでした。
実際には合掌はしませんでしたが心の中では大感謝でした。

まだ7時ですが私は眠くなりましたので布団に入りました。
私は布団に入るなりすぐに眠ってしまいました。
久しぶりにグレを釣ったのと、大バラシもありましたので、充実した1日を過ごしてきっと笑いながら寝ていたことと思います。


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