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上野山さんからのリポート
「4号ハリスを切られた」
尾鷲 (三重県)
2013/07/27
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もう8月も間近になっているというのに、今年の北陸地方はまだ梅雨が明けません。
週末は九頭竜川に鮎釣りに行こうと思いましたら、このところの雷雨で川の水は増えているようですし土曜日の天候もすっきりしません。
週末の鮎釣りはやめて、一人で近くの山にでも登ろうかと思っておりましたところ、金曜日のお昼休みにメールが届きました。
「急に申し訳ないですが、あす半夜に行こかなどうしようかな。暑いやろな」という、ゆたきちさん(以下Y君)からのよく分からない独り言のようなメールです。
これを読み解くに、「自分は明日の土曜日、半夜釣りに行きたいが一人ではよう行かん。誘えばこの暑いのに、よう行くなと断られるかも知れませんが、そこをなんとかシーズン最後の1回を一緒に行きませんか。私は是非とも行きたいのですが」という内容と思われます。
最初からそう書けばいいのに「このオヤジ性懲りもなくまだ行くんか。前回釣りに行ったあとで、もう道具全部洗ったから前半戦は終了です」などと突き放す答えが来るのを恐れて、独り言のようなメールをよこしたと推察されます。
早速、「行くのならどこ方面ですか」と返しますと、Y君はウキが入ったとばかりに喜び勇んで瞬時に「尾鷲〜梶賀〜二木島」方面はどうですとメールが来ます。
翌日大津で会った時にY君は「マキエを打ちましたら上野山さんが入れ食いで釣れました」と言っていました。
その後仕事中にメールをやりとりして場所を検討した結果、尾長グレが狙える尾鷲にしましょうということになりました。
今回は二人での釣行です。
釣りに行くということは、このように前日からすでに釣りの行程は始まっているのです。
誰とどこへ釣りに行って、昼飯は何を食べて、どういう楽しい会話をして、道中面白い経験があったかなどが極めて重要です。
良型の尾長グレが期待できるとなれば、竿は何号で、ハリス、ハリの選択はどうしようかなど前日から期待に胸が膨らみます。
イメージトレーニングではウキが入って尾長グレがかかってから、Y君の差し出すタモにグレが入るまでやってのけてしまいます。
これが釣りの醍醐味であります。
決して当日の釣果だけが釣りではないのです。
当日の釣果だけで、釣りが楽しかったかどうかなどとは決して判断できないのです。
こう書き出しますと、早速これを読んでおられる方は、今回もまたいつものボース釣行記かと勘ぐるかもしれませんが、今回も何度もタモは使いましたよ。
さて、Y君と尾鷲に釣行する事となり大津には朝6時半に集合します。
天気ですが、金曜日は寒気が日本列島を南下するということで、金曜日は私の地元でも雷が鳴り夕方は激しい雷雨となりました。
土曜日の三重県は晴れマークが出ているので雷雨の心配はないようです。
今回は暑いのでカッパは持ちませんでした。
朝4時50分頃に道具を積み込んで自宅を出ます。
途中の今津のあたりでも道路はかなり濡れています。
6時半に大津に到着してY君の車に荷物を詰め込み、Y君と世間話をしながらあっという間に大宮大台のインターチェンジを降りて久しぶりのエサガメでボイルを受け取ります。
二人ともボイルのLサイズを2枚ずつです。
Mが極端に小さいので今回はLサイズとしました。
渡船は11頃に出るということで尾鷲のジャスコで飲み物、昼食をゆっくり買い物して宮城野渡船の前には10時過ぎに到着いたしました。
我々は昼ごはんを車内で食べてゆっくり支度を始めました。
暑い日でしたが、風が吹いていましたのでなんとかしのげそうです。
私は帽子と手ぬぐいを水で十分に濡らしてかぶりました。
風が吹くとこれでかなり涼しく感じられます。
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夏の暑いなか出船を待つ |
やがて船長が港にやってきて11時に船は港を出ました。
半夜の上がりの時間は6時15分ということです。
今日の宮城野渡船の半夜の釣り客は7人です。
人数が少ないのでこれでしたらどこの磯にでも上がれそうです。
船はスローで沖に向かいます。
「前回は尾鷲にはいつ頃来ましたかね」とY君にいますと「確かアラ丸で出て、過去の成功体験にすがって寺島に乗り下山さんと3人ともボーズだった時ではないですか」といいます。
帰ってから釣行記で調べてみましたら09年1月に「3人ともアタリもない完封負け」編がありました。
この時は私もY君もこれから娘が大学に入学するということで、小遣を減額されてこの先釣りに行けるのかなと心配していた頃でした。
Y君とはこれが最後の尾鷲でしたが、実は同じ年に下山さんと6月に尾鷲の筆島に乗り私は瞬殺で4号を切られてのバラシ、下山さんは40cm弱の尾長グレを釣っています。
やがて船は寺島について常連らしき釣り人1名をおろします。
「ここは前回尾長グレをよく釣っていた場所ですよ」と船長が声をかけます。
「次Yさんたち準備して」と船長に言われて我々は船の前に行きます。
「次はドマクラですかね。私は過去に先端の内向きで48cmを釣ったことがあります。ドマクラがいいですね。筆島は低いので嫌ですね」とここに至っても過去の成功体験にしがみつくY君でありました。
船は残念ながらドマクラを過ぎて筆島の隣のアイノ島に着けてくれました。
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アイノ島 左が筆島 |
「道具は高いところに置いておいてね。波が高くなったら電話してね。筆島との水道向きがいいよ」と船長が言います。
ここは、何かと親切な渡船屋さんです。
アイノ島は筆島との水道は深そうですが正面左側は全体に浅くところどころ切れて深くなった溝があるような感じです。
干潮が午後3時頃ですのでこれから潮は引くようです。
波はそうありませんので磯際から5mほど下がったところにピトンを打ちます。
前回の熊野では、1.5号の竿に3号ハリスで何度もバラしましたので、今回は仕掛けを1ランク上げました。
竿はグレスペシャル2号、道糸は2年前に四国で1回だけ使った5号、ハリスは4号としました。
ハリはエサガメで購入しましたボイルグレの9号です。
道糸とハリスを電車結びでつないで釣研の0ウキをヨウジでとめます。
ハリスがどこを向いているかわかるように緑のナビ浮きをウキの下30cmアタリに付けます。
ウキ下は2ヒロで始めます。
足元にマキエを打って筆島との水道を流しますとかなりの速さでウキは沖に出て行きます。
Y君とは入れ替わりながら釣ることにします。
1投目はエサがついてきます。
30cmほどウキ下を深くして投入します。
ウキは沖に出て行き30mほど流れたあたりで潜っていきます。
今にも道糸がスッスッと引っ張られるのでないかとドキドキしながら道糸を見ていますが変化はありません。
しばらくして、仕掛けを上げますと今回もエサが付いています。
流れが速いのでハリスが浮いているかもしれないと思い、私はハリスにジンタン5号を打ちました。
仕掛けを足元に入れて充分ハリスを沈ませてから再度流し始めます。
その時にY君にアタリです。
竿は立っているのと沖で掛かりましたので何とかなりそうです。
竿はかなり曲がっているにもかかわらずウキが沖で海面に出ています。
その後魚が外れて仕掛けが戻ってきました。
針ハズレのようです。
「ウキが見えていたのでなにか青物のような魚ではないですか」と声をかけます。
「いきなり竿に来ました。結構引きましたよ」というY君です。
ハリスの号数を聞きましたらマニアックな3.5号ということです。
私はエサが残るのでウキのヨウジを外してスルスル釣りにしました。
道糸は5号ですがナビウキを付けているのと、ジンタンを打っているためか仕掛けはゆっくりと沈んでいきます。
仕掛けが20mほど流れて筆島との水道から出たあたりでウキが一気に入ります。
合わせると同時に竿が引き込まれます。
20mほど道糸が出ていましたので、道糸のクッションもあり竿は一瞬立ちましたが、あっという間に伸されてしまいました。
竿をタメるまもなく仕掛けが切れてウキが飛んできます。
ハリスを見ますとハリのチモトあたりからザラザラになって切れています。
ハリスの切れ方ですが、先端1cmほどが細く変形してねじ切れたようになっています。
これは、強い力で引っ張られたことと根に擦れて切れたのではないかと思います。
4号ハリスを瞬時にねじ切って行くとはどんなすごい魚が食いついたのでしょうか。
時計を見ますと、まだ釣りを開始して30分ほどしか経っていない12時半でした。
今回は道糸5号、ハリス4号という万全の体制で臨みましたが、開始早々いとも簡単に仕掛けを引きちぎられてしまいました。
これならハリス6号でも持ってくればよかったと思いましたが、これは後の祭りです。
その後30mほど沖に流したウキが入り一気に竿までアタリが来ました。
横に引きますのでグレではないようです。
タモを持ったY君に、もう少し時間がかかると思うので待っていてくださいといってやり取りしましたが横に走ったあと、魚はすんなりと上がってきました。
これはダツでした。
Y君がハリスをつかんで磯の上に引っ張り上げてくれました。
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ダツ 80cmほどありました |
「先ほどの4号を切られたバラシはダツの引きではなかったですね。ダツは横に引くだけです」とY君に声をかけます。
私はハリスを切りましたのでハリスを直すついでにクリームパンを食べて飲み物を飲みます。
暑いので休憩をしながら釣りをしないともたないですね。
その後、潮は沖に出ますので釣れそうな感じですがエサが取られません。
Y君は気分転換ですと言って左側の浅い方に移動して釣りを始めます。
しばらくして「アー切られた」という声で振り向きますと「ウキが入って合わせたのですがあっという間に切られました。ここは浅いので強引にやり取りしないとダメですね」と言っています。
Y君はダツらしき魚に続いて今日2回目のバラシです。
3.5号のハリスのチモトから切れたと言っています。
私は同じスルスルの仕掛けで流していました。
30mほど沖に流れたウキが潮に押されて潜っていった時に道糸が走ります。
これはアタリと合わせを入れて磯際まで走って竿を立てます。
魚は付いていますがあまり引きません。
すんなり上がってきましたのは、沖磯にもかかわらずになんとチヌでした。
仕掛けがハリス4号と太いので、普段1.5号で充分なサイズのチヌには気の毒です。
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4号ハリスで釣れたチヌ 30cmほどでした |
私は釣れたチヌは放流しました。
Y君はしばらく左の浅いところでやっておりましたが餌取りが出てきて釣りにくいですと言って戻ってきました。
私は同じ場所で竿を出すのが飽きてきましたので、気分転換に左の浅いところに移動します。
偏光グラス越しに磯を見ますと、シモリで明るくなった場所が沖に続いています。
そこの明るくなった中に暗く見える割れ目が何箇所か見えます。
暗くなった割れ目から魚が出てきそうな雰囲気はあります。
ここでは2ヒロくらいでやらないと掛かった魚は取れないと思いヨウジでウキを固定します。
大きなサラシが左から出ますのでウキが押されて潜ってしまいます。
沖にウキを投入してもサラシで右に押されます。
道糸が5号と太いので、どうしても道糸が先に流されてしまいウキが素直に流れません。
それならば足元と、足元を攻めますが足元は根が出ていて浅いので仕掛けが根がかりしてしまいます。
一度ウキが動かないのであげてみましたら、ハゼのような10cmほどの魚が9号のハリを咥えて上がってきました。
しばらくやってみて釣りにくいので私は元の筆島との水道に戻りました。
今度はキワを釣ってみようとウキを3Bに変えてオモリを打って足元に仕掛けを投入します。
沖に流れようとする仕掛けを戻してウキ止めまで仕掛けを落として少し誘いを入れます。
そうこうするうちにウキが根がかりのように30cmほど入ります。
根がかりかと思い上げますと魚がついていますが引きません。
これは4年前に下山さんと筆島に乗った時にも釣れたイガミです。
イガミは40cmほどありましたが放流します。
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4時頃釣れたイガミ |
イガミを釣ったあとは潮が変わり沖のゴミが手前に流れてきます。
これはアカンと水道の中を釣りますがたまにエサが取られる程度でアタリはありません。
「これは磯に上がったお昼頃の方が魚の活性は高かったですかね。アーア今日もボーズかな。なんで船頭はドマクラに着けなかったんですかね。以前にあのドマクラの見えている先端の内側でグレを釣ったんですよ」と残り時間が1時間ほどに迫り、Y君のボヤキが出始めます。
足元にゴミが来なくなりましたので、ふと沖を見ますと潮が流れているような気がしました。
時刻は5時20分くらいです。
ウキ下を竿1本半まで下げてオキアミを杓に3、4杯思い切り沖に投げて仕掛けを投入します。
ウキは右に流れている潮に乗ってドンドン流れていきます。
ウキが見えなくなりましたので道糸を見ていますと突然スッスッと糸がスプールから出ます。
これはアタリと大きく合わせて竿を立てます。
当然尾長グレと思っていますので慎重に寄せますが今回もそう引きません。
すぐにウキが見えて上がって来たのは良型のイサギでした。
これは35cmほどのイサギでした。
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夕方沖で釣れたイサギ |
イサギはハリハズレが心配でしたので慎重にタモですくいました。
「どんな仕掛けですか」とY君が聞いてきましたので「3Bで竿1本半です。遠投でウキが見えなくなって道糸が走ってアタリが出ました」と言います。
Y君も早速3Bのウキに変えたようです。
Y君が何投かしてビュビュという音に顔を向けますとY君の竿が大きく曲がっていますが次の瞬間竿が跳ね上がります。
「どうしました」と聞きますと「右沖に遠投したウキが入った瞬間竿が引っ張られて魚はものすごい速度で左に向けて走りました。オープンベールでしたので勝負しようと糸の出を止めようと思いましたら糸を止めた瞬間に切れました」ということです。
Y君に掛かったのは巨大シイラかヒラマサか何かはわかりませんが、糸を出し続けて魚が止まってから勝負すべきだったかもしれません。
Y君はこの日3回目のバラシとなりました。
時刻は5時40分ですのでそろそろ終了間際です。
「私は釣行前には30cmの尾長が数匹釣れればいいと、オジサンながらささやかに思っていました。訳がわからん巨大な魚がかかってブチ切られてのボーズとはなんとも悲しいです」とY君が言います。
「ま、バラシもあったので今日は楽しかったのではないですか」といいますと「まあ、強烈な引きで切られるのも夏の風物詩みたいなものですな。上野山さんは4目釣ったのですか。相変わらず外道オヤジを爆進ですな」となんか気が抜けたような感じでY君は言っていました。
強烈なバラシで毒気を抜かれたのか、Y君はその後ボヤキが出ませんでした。
きっと家に帰って布団に入って眠るまで、バラシのシーンは何度も繰り返されることでしょう。
月曜日仕事をしながらも、あの時糸を止めずにベールオープンで魚が止まるまでなぜ待てなかったのかと何度もくやんだり、バラシの瞬間が蘇って仕事中に「アッ切れた」などと叫んでしまわないでしょうか。
ま、そうやって釣りの経験が少しずつ蓄積されて釣りが上達するのでしょうね。
やがて6時になり船が向かえに来ました。
帰りの船では寺島に乗ったかたが30cmほどのグレを1匹釣った他は誰も釣果がないようでした。
今日はグレの食いは不調の日のようでした。
料金を払うときに船頭さんに4号ハリスを切られた話をしましたら「そんな目にあったのでしたら今日は満足でしょう」と言われました。
30cmのグレが釣れるのと4号ハリスが切れる経験をするのでは、4号が切れる方が釣り人としては得難い経験ですね。
我々は久しぶりに尾鷲のさつき湯に使ってさっぱりして、大津に10時半に到着し敦賀には12時過ぎに帰りました。
私は今回もグレを釣ることができませんでしたが、バラシもありいろいろ外道も釣り楽しい1日でした。
相変わらず私にとってグレを釣るのはなかなか難しいですね。
次回はグレが釣れたよという報告をしてみたいものです。
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