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 上野山さんからのリポート
 「二人ともに40cmのグレ

 越前海岸の地磯 (福井県)
   2019/01/04

 


前回ぐれねっとに釣行記を投稿いたしましたのは昨年の11月20日でした。
崖の上り下りがこたえたのか、釣りの後で腰痛が出てその後は釣りには行けませんでした。
なじみの整骨院にも通って、毎日ストレッチなどして腰の状態も少しは良くなってきました。
年末の休みはFさんと四国に行こうという話をしていましたが、天気が思わしくなく中止としました。
そのあと12月31日からなら竿を出せそうな天気に変わりましたが、私が31日に用事を入れてしまい結局正月休みの四国釣行は中止となりました。

そんな中、1月3日にFさんから電話があり4日は越前でも竿を出せそうな天気ということで、4日はFさんと越前海岸の地磯に初釣りに行きました。

4日は南風が吹くということですので、波はそうないかもしれないとFさんが若狭大島の渡船屋に電話を入れたのですが、渡船は無理ということで越前海岸の地磯に釣行するということになりました。
何故に越前海岸になったかと申しますと、Fさんは1月1日に一人で越前海岸に釣行してグレらしき大物をバラしたと言うことです。
これは今いけば40cmのグレが釣れるのではないかということで、場所は腰痛の私に合わせて越前海岸の中でも比較的楽に行くことができるという、玉川弁天という場所になりました。

実はこの場所は、30年近く前にロックシェッドの中を走っていたバスが、上から落ちてきた巨岩につぶされるという大事故のあった場所です。
私はなんとも新年から不吉な場所に行くものだと思いましたが、まあ越前の地磯では楽に行けるところということで、一緒に行くことにしました。

Fさんとはサンスイ釣具で朝の4時半に待ち合わせます。
我々はオキアミ1枚ずつにグレパワーなどの集魚剤を持ちました。
私はマキエを生のオキアミにしましたが、手が荒れますのでいつものように着けエサはボイルのレンガとしました。

サンスイでオキアミを砕き、軽く集魚剤と混ぜて荷物を私の車に積んで出発です。
夜明け前ですので国道8号線には車はほとんどいなくて、玉川弁天には5時半にはついてしまいました。
駐車場には1台の車もありません。
車の中で少し待っていますと、ルアーの釣りをする格好をした若い2人組が隣に車を止めました。
我々も車から出て支度をはじめます。
隣の二人組に声を掛けますと、シーバス狙いということです。

Fさんが予備の背負子(しょいこ)に、私のバッカンとライフジャケット、カッパをくくりつけてくれました。
急な岩場を下りる場所もあるということですので、私はシューズタイプの磯靴にいたしました。
10分ほどで準備ができ出発です。
まだ暗いのでヘッドランプをつけて歩き出します。 

暗くて南風が吹いていますので、歩き始めは何とも肌寒い感じです。
歩き出しでいきなりFさんが道を間違えて、観音様が祭ってある洞窟に入ってしまいました。
この洞窟は奥に観音様が祭ってあるのですが、真っ暗な洞窟の中にぼんぼりのようにほの暗い電気がポツポツとついている様子は異界への入り口のようです。
これは一人ではとても来られない不気味な場所です。

Fさんは少し戻って道を左側に向かい、海沿いの草の茂る道を進みます。
しばらく行きますと、あの大事故のあったロックシェッドが見えてきます。
Fさんに「ここに入っていくのですか」と聞きますと「そうや」ということです。
私はあまりの不気味さに、こんなところは通ると不吉なことが起こるのではないかと思いましたが、まあ釣りをしたい気持一心で薄暗いロックシェッドに入りました。
天井からは水が落ちてきて、歩く音が反響します。
足もとは崩れたコンクリートの破片もゴロゴロしています。
こんな中を歩いていますと、ヘッドランプで照らされた明るいところのすぐ横の暗闇から、いつ化け物が飛び出してきてもなんら不思議ではありません。

ロックシェッドを抜けますと、事故で崩落したと思われるガレキの横を通ります。
少し歩きますとこんな場所に何故あるのかと思う浄化槽のような構造物があります。
ここまで来たらあとは岩を下りれば釣り場ということです。 

Fさんが右上を差して「あそこにある鳥居の横からも降りられるが、ワシはこの岩の割れ目からいつも下に降りている、こっちでいいな」ということです。
私は初めての場所なので訳が分かりませんのでFさんと一緒に岩の割れ目から降りることにしました。
Fさんが背負子の端に竿ケースの肩紐をひっかけて、両手を使って降りるようにしろと言います。
私は背負子を担ぐのも2回目ですし、背負子に竿袋をひっかけて歩くのも初めてです。 

割れ目の岩は溶岩が固まったような感じの岩でゴツゴツしていますが、棚になっている感じではなく少し飛び出した岩に足の底を掛けるといった感じです。
手はわずかに飛び出した岩をつかみながらバランスを取ります。
靴の裏1/3くらいのでっぱりを足がかりにして次の足場を捜して降りて行きます。
手は足を移動する間はしっかりと指で岩の突起を押さえます。
これはボルダリングの競技を上から降りるようなものです。
しかも背中にマキエと竿袋を背負っています。
距離は5,6mだと思いますが、暗い中ヘッドランプで足掛かりを捜しての岩壁の下降は気を使いました。 

下に降りますと弁天岩は広い釣り場でした。
左側は比較的低いのですが右側は高い磯で5mのタモでは届かないということです。
右の端は沖磯があり、そこに波が当たってサラシが出ます。

我々は高いところに道具を置いて釣りの準備を始めました。
時刻は6時半になりましたが、まだヘッドランプを点けないと仕掛けは作れません。

 

事故で崩壊したロックシェッド この中を歩いた 昼間でも不気味な感じだ


Fさんがマキエを混ぜてくれましたので、私は40cmのバッカンに水を汲んで活かしバッカンにしました。

今日の仕掛けです。
竿はアテンダーUの1.5号にリールはシマノのレマーレです。
道糸3号にハリスは2.5号とし2ヒロ取り、サルカンで道糸と結びます。
釣研の小ぶりの3Bのウキに3Bのオモリをサルカンの上に着けます。
ハリはグレバリの7号としました。
途中で7号のハリが無くなり8号を使いました。
ハリス2.5号としたのは万が一真鯛の大物が来ても一瞬で切られないためです。

Fさんが前回は3ヒロから4ヒロでやったということですので、ウキ下は3ヒロ半でスタートします。

この場所はFさんによりますと5,6ヒロあるのではないかということですので、エサが残ればウキ下を深くするつもりです。

 

弁天岩の高い場所 平らで足場は良い


時刻は7時前になりました。
風は弱い南風ですので道糸があおられることはありません。
時折ウネリが来てサラシが出ますので釣りやすい日です。
足もとにマキエを打ち、仕掛けを岸から1mほどのところにウキを投入します。
ウキは左からのサラシに押されて前に出て行きます。
なんとなく釣れそうな気がします。

しばらくして仕掛けを上げてみますとエサがありません。
私は仕掛けを少し右寄りに投入しました。
ウキはやはり前に出ますが、左からのサラシと右の沖磯から出るサラシに挟まれてウキは沈んでいきます。
ウキはかなり沈んで見えなくなりましたが、道糸が走るようなアタリはありません。

しばらくして仕掛けを上げますと魚がついています。
これは、勝手に釣れたという感じです。
この魚は26cmのグレでしたが、合わせていないのでハリを飲んでいました。
とりあえずシメてFさんの持ってきた磯クーラーに放り込みました。
磯クーラーはFさんが氷を持ってきましたので、海水を入れて冷やしてあります。
私はとりあえず、初釣りでのグレボーズは無くなりましたので気が楽になりました。

Fさんは右端で竿を出していましたが、どうも仕掛けがうまく入らないと言って磯の左側の低い場所に移動しました。
その後は私に20cmほどのコッパグレが釣れたきりアタリがありません。

沖に仕掛けを投げてマキエを打ちますと水面までスズメダイが浮いてきます。

エサトリの活性はまだ高いようです。
私は沖と足もと、両方を釣ることにしました。

足もとにマキエを打ち、右側に仕掛けを投入してサラシに押されて戻ってきた仕掛けが馴染んで立った頃にウキが入ります。
釣り上げますと、この魚は28cmのグレでした。
この魚は活かしバッカンに放り込みブクブクのスイッチを入れます。

時刻は7時半頃です。
同じやり方でもう1匹同じサイズのグレを釣りました。

 

7時半ごろに釣れたグレ 28cm


その後は釣れない時間が続きます。
私はタナを浅くしたり深くしたりしましたがエサがとられるばかりです。
仕掛が馴染みますとウキがユックリ入っていき止まってしまいますが、Fさんに言わすとこれはスズメダイが着けエサを引っ張っているアタリだということです。
活性の高いグレがいればスズメダイの咥えたエサを横取りするのでしょうが、なかなかウキが見えなくなるアタリは来ません。

8時半ごろになり曇っていた空も晴れてきていい釣り日和になりました。
9時ごろになりアタリが無いのに仕掛けを上げますと魚が掛かっています。
すぐにウキが見えましたが、この魚は意外と引きます。
海面に姿を現したのはウマズラです。
このウマズラは30cmほどありましたが磯に抜きあげました。
この時ハリはガマの金色のグレバリの8号を使っていましたが、よくオチョボ口に掛かったものだと思いました。
Fさんに見せましたらこれはおいしいので持って帰れということです。
私はウマズラをシメて磯クーラーに放り込みました。

 
ウマズラ 30cmほどの大きさ

ウマズラを釣り上げて再度仕掛けを投入していましたら、突然後ろから「どうですか、釣れますか。横で竿を出してかまいませんか」と声を掛けられてビックリしました。
釣り人2人が崖を下りてきたようです。
この場所は広いので6人でも竿を出せると思いましたので、2人の追加でしたらなんとでもなりそうです。

Fさんが我々二人はかたまって釣ろうというかもしれないと思い、「少し待ってください。相棒に場所を聞いてみます」と私は言ってFさんのところに行きますと、Fさんは今の場所で釣りたいということですので、声をかけてきた同年輩くらいの方は最初Fさんがやっていた磯の右側、もう一人は私とFさんの間で竿を出すことになりました。 

足もとに投入したウキは右に流れるようになりました。
先ほどまでは右からのサラシに押されて右側に投入したウキは戻ってきていましたので、左から右に潮が流れだしたのかもしれません。

釣を再開して2投目でしょうか着けエサが着いて上がってきました。
これは何らかのサインだと思いウキ下を50cmほど深くしてそのまま仕掛けを足元に入れました。
足もとに投入したウキは右に流れますが、右側からもサラシが出ていますので潮に押されて潜っていきます。
ウキが見えなくなってかなりの時間がたちましたので、着けエサがあるかどうか心配ですがここは辛抱して少しずつ道糸を出します。
すると、海面に向かってフワット弧を描いていた道糸が急に引っ張られて海に向かって直線になります。
これはアタリと思い合わせます。
合わせますとかなりの手ごたえです。
ウキ下4ヒロからかなりウキを沈めていますので、いったい何ヒロで食ったかは分かりませんが、急いでリールを巻かないと根に擦れると思い強引に竿を立ててリールを巻きます。
掛かった魚は沖に走るような引きではありませんので徐々に浮いてきます。
ようやくウキが見えて一安心ですが、ここから魚は左側の足元に向けて突っ込みます。
私は竿を右側に倒して魚の向きを変えました。
やがて魚は水面に浮きましたが、これは良型のグレです。
Fさんの6mのタモを伸ばしても一人で掬うのは大変と思いましたので、隣で支度をしている釣り人に「すみませんがタモを入れてもらえませんか」と声を掛けました。
隣の釣り人は声を掛けられて、私の竿の曲がり方を見て驚いたようでしたが快くタモを入れてくれました。
「急がないでゆっくりやってくださいよ」というアドバイスをいただきましたので、この方はかなりのベテランなのでしょう。
隣の釣り人が差し出したタモに頭からグレを入れて無事に取り込みました。
Fさんに後で聞きましたが、ここは6mのタモでも一人での取り込みは大変な場所ということです。
「これは40cmほどあるのではないですか、いい魚ですね。」とタモを出してくれた釣り人が言います。
下山さんに頂いたスケールで測りましたらこの魚は40cmちょうどでした。
ハリスを見ますとグレから30cmのアタリが根に擦れてザラザラになっていました。
ハリスを2.5号にしてよかったと思いました。


 
初釣で釣れたグレ40cm

私は初めての場所に初釣りに来て40cmのグレを釣ることができて満足でした。

私は昨年まで、日本海側では40cmのグレを一度も釣り上げたことがありませんでしたが、昨年の泊に続いて今回は越前の玉川観音において2年連続で40cmのグレを釣り上げることができました。
これは新年からツキがあるとしか言いようがないのではないでしょうか。
釣れた時刻は9時40分ごろです。
寒の時期は朝一番が時合というわけではないのですね。


 

初釣で40cmのグレを釣り上げた私 今年は幸先がいいカモ 後ろはタモを入れてくれた釣り人


その後私にもう1匹同寸のウマズラが掛かりました。
これはFさん用にとキープしました。

しばらくして潮が緩んだのかウキが沈んで行っても今度は根掛かりするようになりました。
私が根掛かりを外していますとFさんがタオルで魚を包んでやってきました。
「ワシにもグレが釣れたよ、しかもオナガだ」と言います。
早速スケールで測ってみましたらこの魚も40cmの尾長でした。
Fさんは場所を移動したときにタモを持っていかなかったので、後から来た釣り人にタモを入れてもらったということです。
我々二人ともあとから来た釣り人にタモでお世話になってしまいました。
ともあれ、二人ともに40cmのグレが釣れましたので嬉しいことです。
Fさんがオナガグレを釣り上げたのは10時半頃でした。


 

Fさんが10時半ごろに釣り上げたオナガグレ40cm  やはり尾びれがオナガだ


その後は二人ともに28cmほどのグレを2匹釣りましたが、もう40cmのグレのアタリはありません。
12時を過ぎてマキエも無くなりましたので我々は竿を置きました。

釣果は私が40cmのグレ1枚、26から28cmのグレ6枚、ウマズラ30cm2枚、Fさんがオナガグレ40cm1枚、クチブトグレ28cm3枚でした。
地磯の釣りとしては充分な釣果です。
私は活かしバッカンの中のグレを2匹放流してグレは全部で5枚持って帰りました。 

帰り道にロックシェッドまで来ましたら、ロックシェッドの上から大きな岩が今にも落ちそうになっています。
「この岩は前よりも落ちかかっているな」と言ってFさんは平気な顔をしてロックシェッドに入っていきますが、私は今にも岩が落ちてきそうな気がして気が気ではありませんでした。
無事に車に戻りますと冬なのに心地のいい汗をかいていました。 

帰りにサンスイ釣具によってエサ代金を払いますと、ご主人は「今日は二人ともすごいですね。私は高校生の時に越前で47cmのグレを釣り上げて以来、100回以上も越前の地磯に通っていますがその後は一度も40cmのグレを釣ったことが無いのです」と悔しそうに言います。
「そういう訳なら、背負子をかついで行くような越前の地磯で釣るのは初めての私が、いきなりビギナーズラックで40cmのグレを釣ってしまったら、私はあと99回、越前では40cm越えのグレは釣れないということですか」と軽口を言いますと、「その通り上野山さんは越前ではあと99回は40cmのグレは釣れません」とご主人は力むのでした。 

次回も40cmのグレが釣れるとよいのですが、今回はガイドをしていただいたFさんに感謝です。
玉川弁天にもう一度行きたいかと聞かれれば、大事故があったという場所を考えますと何とも微妙です。
もちろん一人ではよう行きません。
Fさんと私は悔しそうなサンスイのご主人を前にして、次回も40cmのグレを釣ろうと初釣の成果を喜ぶのでありました。


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