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 上野山さんからのリポート
 「真鯛、80cmオーバー

  宇久 (福井県)
   2024/04/27

 


磯からフカセ釣で80cmオーバーの真鯛を釣ったのは今から35年前です。
その頃はまだ私は32歳でした。
当時は若狭でチヌ釣りばかりをしておりました。
チヌ釣りをしていて、なぜに86cmの真鯛を釣り上げられたのかと考えてみました。

嫁さんの父親が高知県の出身ということで、当時親戚に高知磯釣りクラブに所属していたおじさんがいました。
真鯛を釣り上げた前年の5月の連休に、おじさんに初めて高知県の宿毛から鵜来島に連れて行ってもらって、私はバラシの連続でした。
多分尾長グレやサンノジなど大きな魚が掛かっていたと思います。

それまで、チヌしか釣っていなかったので魚が掛かってからリールのスイッチをオフにして逆転しても間に合いましたが、鵜来島の魚は掛かった瞬間に竿を引き込まれて、とてもスイッチをオフにする余裕はありませんでした。
また、リールをフリーにして合わせられても魚の引きが強いのでドンドン糸を出してしまい根擦れでバラしました。
結局、初めて行った鵜来島では30cmほどのクチブトグレしか釣れませんでした。
その時に合わせる前からリールのハンドルフリーにしておかなくてはいけない、竿は曲げてもめったに折れないと学習したのでありました。

35年前に86cmの真鯛を釣った時も合わせた直後のものすごい引きを、リールをフリーにしていて走らせることができたので取り込めたと思います。
最期に魚を寄せるときは1号のチヌ竿を弓のように曲げて取り込みました。

釣り上げた真鯛は大きくて当時の磯クーラーに入らなかったので、渡船屋さんにパレットを借りて持って帰りました。
真鯛はサンスイ釣り具店で魚拓を取ってもらいました。

チヌ狙いで釣りに行きましたのでハリスは2号でした。
ハリス2号で86cmの真鯛を釣り上げたということで、亡くなったサンスイ釣り具の親父さんが、わざわざハリス2号と魚拓に書いてくれました。

 

35年前 私が32歳のころに釣りあげた真鯛の魚拓

思えばこのころが最初に磯釣りにのめりこんでいたころと思います。 

さて、過去の真鯛の話が出てきて読んでいる皆さんは、今回の釣行記は真鯛の話かなと思い始めているでしょうか。 

4月27日はFさんの誘いで、泊の隣の渡船区の宇久から、千島群礁に釣りに行きました。

今まで千島には常神半島の小川や神子から渡船が出ていたのですが、最近はフカセ釣の釣り人が減っているためかあまり船は出ていないようです。
宇久の谷久渡船では人数がそろえば、千島に渡すということです。

Fさんは25日に宇久にグレ釣りに行き,30cm前後のグレを40枚ほど釣って18枚持って帰ったということです。
「もうグレの数釣は堪能したので1発狙いで千島に行かんか。谷久渡船では千島で40cmオーバーのグレも釣れとるで」というFさんからの電話でした。 

私はすぐに行くと返事をしましたが、過去に5,6回小川から千島に釣りに行っていますが、釣ったのは28cmのグレ1匹だけです。
常神の磯や千島の磯は若狭を代表するような磯ですが、私はナカナカ釣れません。
沖合にあります千島は行く前はいかにも大型の真鯛やチヌが釣れそうな風景なのですが、スズメダイやアジに邪魔をされて、私はボーズが多いです。 

谷久渡船では宇久の磯に渡した後で千島に行くということです。
渡船は5時に出船ですので、敦賀を3時半に出発いたしました。
今回はオキアミ2枚に集魚剤、ボイルのオキアミMサイズを半分持ちます。 

宇久の港に到着いたしますと、今日はルアーの釣り人を含めて15人ほどの釣り客がいました。
連休の初日で凪の予報ですので人は多いでしょう。
天気は曇りの南風で海はベタ凪です。 

5時に出船して、宇久の磯に釣り人を下ろして残った4人で千島群礁に向かいます。
船はスローで走りますので10分ほどかかりました。

 
 千島群礁 一番右の小さな岩が私の下りた「恋月」

千島に近づくと期待は高まりますが、過去のボーズの記憶もよみがえります。
どこの釣場にも人がいないので、今日は一人一磯で釣りができそうです。

Fさんと2人組は「黒グリ」周辺に下りました。
私は「恋月」に下りました。 

過去に5,6回千島に釣りに来ましたが「恋月」はいつも常連さんが下りて私は一度も下りたことがありません。
一度どんな磯か下りてみたかったので、私だけ離れた場所で釣ることにしました。 

下りてみますと、ここは足もとから根が出ていて全体に浅い感じの磯です。
左側や沖にも根があるようですので、大型の真鯛が来たら取り込むのは難儀しそうです。
それにしても、磯の名前で「恋月」とは風流ですね。 

船長の話ではこの磯は3人でもできるといっておりました。
ポイントは船着きですが反対側の宇久向きでもやれるということです。
眺めだけですと、ここはなんだか秘境のような雰囲気のある釣場です。

 

「恋月」からみた千島の「窓グリ」方面 右側は常神半島の御神島


今日の仕掛けです

竿はマスターモデル尾長M、道糸3号、ハリス3号、グレバリはザロックの7号としました。
ウキは小粒の3Bのものでタナは竿1本弱としました。
道糸3号は前日にサンスイ釣り具店に行って巻いてもらいました。

サンスイ釣り具の御主人は、私があまりに穂先を折るというので、仕掛けを作って竿袋に入れておく時にウキを入れて竿に括り付けておく、手作りの「お守り」の袋をプレゼントしてくれました。
今回、早速「お守り」の袋を使いました。

 

サンスイ釣り具の御主人手作りの「お守り」の袋 仕掛けのウキを入れている


千島群礁では5月の連休の頃にはのっこんで来る大型真鯛が掛かってきます。

昨年の今頃はFさんもここで1発大物に切られたということです。

私は大型の真鯛が来てもいいように、道糸ハリスともに3号としました。
ハリは大型真鯛に備えて、尾長グレ釣りでよく使ったザロック7号を選択しました。

釣りを始めたのは6時過ぎです。
マキエをまきますと潮はゆっくりと左に流れているようです。
ウキが足もとに寄ってきて海藻に根掛します。
私はこの潮ではアカンのではと思いました。

根掛しますのでウキ下は60cmほど浅くしました。
足もとには根が出ていますので、竿2本ほど沖を釣ります。
3回目くらいにボイルのオキアミの頭が齧られます。
何かエサ取りがいるのでしょう。

5投目にスッとウキが入ります。
チヌにしては早い入り方です。
合わせますと掛かりましたが、小さい魚です。
上がってきたのは23cmほどのチャリコです。
このチャリコは放流しました。

 

1匹目はチャリコ

これがいるのなら大型真鯛もいると思いました。

次にウキが沈むとベラが釣れてきました。
その後はアタリが出ません。
いつものように千島では釣れないなと思いました。
もう1匹ベラを釣って時刻は9時前になりました。

潮が左に流れ始めましたので、私は船着きから1段下に下りて磯の左側を釣ることにしました。
マキエを打って仕掛けを投入しますと、ウキは左側の見えているシモリに向かって流れます。1投目はエサがついてきました。
南風が当たりはじめましたので、私はハリスにジンタン4号を打ってウキが少し沈むように調整いたしました。

場所を変わって2投目です。
少し沈み気味に流れていたウキがシューと入ります。
チヌやグレよりは入るスピードが速いです。
軽く合わせますと、とんでもない引きです。

魚は一気に沖に向かって走ります。
ブレーキを離して魚を走らせます。

掛った魚は20mほど走って止まりました。
竿で起こしますとまた走りますが、道糸3号を信じてここは止めます。
竿は極限以上に曲がっていますが魚は止まりました。
この竿は意外と胴が強いようです。

ここからが勝負です。
南風が吹いていますので道糸がキーンといって泣きます。
魚は右に左にと動きますがそのたびに竿が胴で引きを吸収してくれているような感じです。
竿は胴の部分から曲がっていますが折れそうな感じはしません。
この竿は重い分、胴が頑丈に作られていると思いました。

急に魚が沖に走りますと、リールのドラグが機能してジーと糸が出ます。
ドラグの調整も昨日致しましたので、ここまでは思っていた通りの展開です。
魚が止まりますとリールを巻いて、走ると竿を立てるだけ糸を出すようなやり取りが続きます。

今回は予想以上に竿が健闘している感じです。
マスターモデル尾長は穂先を3回も折ってアカン竿やと思いましたが、前回のカンダイ53cmも難なく取り込めましたし、本当はスゴイ実力の竿かもしれません。
こんなに竿を曲げる引きが長時間続くのはがまかつの設計者も想定されていたでしょうか。
50cmの尾長グレでも、もうとうに上がっている感じです。

この間10分近く引き合いをしていたでしょうか。
竿は満月以上に曲がった状態が続いています。
リールはドラグの調整が良かったでしょうか竿がお辞儀すると少し糸が出ます。

このやり取りは永遠に続くように思いましたが魚は弱ってきました。
ようやく海面の下に赤いウキがにじんで見えてきました。

ここでまた魚が引き込みます。
ブレーキを緩めて糸を出します。
中々油断はできません。
ここまで長い間よくサルカンの結び目やハリのチモトの結び目が持ってくれていると思いました。

ついにウキが海面から出ますと青白い魚が見えてきました。
魚が見えてきましたので、私は竿を操作しやすいように1段高い船着きに移動しました。
私には竿に装着しているリールの固定が緩んでいないか確認する余裕もありました。

船着きからは魚が右に走ると竿を左に倒し、左に走るとその逆にと竿を操作しました。
沖に走った時は竿が立つ分だけブレーキを使って糸を出しました。
長時間のやり取りでだいぶん魚は弱ってきたようです。

いよいよ足もとに魚が寄ってきました。
私は磯を1段低いところに下りてタモを取りました。

足もとに見えているのは80cmほどの大きな真鯛です。
後はタモに入れるだけですが、こんな大きな真鯛はタモに入るかと一瞬思いました。

1回目は掬いそこないました。
タモの横を魚が通ってしまいました。
南風でタモの操作もやりにくいです。

伸ばしたタモを縮めます。
片手で竿を持っていますので、何ともやりにくい動作ですが目の前に魚がいますので火事場のバカ力を出します。
片手で伸ばしたタモを上に向けて縮めます。
短くしたタモを使って足元で魚を掬おうと思いました。
魚はもうこれ以上引かないと思い、目いっぱい糸を巻いた状態でリールのブレーキを固定しました。

すぐ足もとまで寄せた真鯛を今度は慎重に頭からタモに誘導します。
今度は入りました。

このまま持ち上げるとタモの柄が折れるかもしれないと思い、私は磯際まで降りてタモの枠を片手でつかみました。
私は力を出してヨッコラショという感じで海から抜き上げた真鯛を磯の上に下ろしました。

ようやくひと仕事終わったなというというのが実感です。
なんといっても今年68歳になるのですから。
竿を置いて私は飲み物を一口飲みました。

 

タモに入った真鯛

磯はデコボコしていて平らなところがありません。

下山さんに貰ったメジャーで測りましたら、だいたい81cmでした。

この大きさでは家で魚をサバクのは無理だと思いました。
このまま写真を撮って放流しようと思いましたが、谷久渡船が旅館もやっていることを思い出しました。
良ければ谷久渡船に貰ってもらおうと思いました。

磯から谷久渡船に電話してみましたが電話に出ません。
船長の携帯電話はFさんが知っているので磯の上でFさんに電話しました。

電話に出たFさんに「いま真鯛釣ったけど谷久渡船が貰ってくれるか船長に聞いてもらえませんか」といいますと、Fさんは釣りの最中にそんなことで電話するなといった感じで「なんや真鯛ってどんな大きさや」といいます。
「81cmほどあります。磯クーラーに入らないと思います」といいますと一瞬Fさんが息をのむ感じがして「それじゃすぐに電話してみるわ」といいます。

その後旅館から着信があり、おばあさんと思われる方と話しました。
「今、恋月という磯の上にいるけれども80cmの真鯛を釣ったがいらなければ放流する」といいましたら、
「あんた恋月さんですか」

「いや上野山といいます」
「上野山さん、魚はほかさんとって家のおかずにするで。ありがとうネ」というやり取りをしました。

電話の後で私はマダイを締めました。
その数分後にFさんから「船長も真鯛をもらいたいといっている」という電話が来ました。
その後船長からも着信があり「上野山さん、本当に持って帰らないのですか」といいますので「一般の家では大きすぎてさばけません。旅館で食べてください」といいますと「ありがとうございます」と船長はお礼を言いました。
こんなふうに磯の上からドタバタと電話でやり取りをして真鯛の貰い手も決まりました。

 

磯クーラーには入りきらなかった。

真鯛は磯クーラーに押し込みましたが、尻びれは入りきりませんでした。
私はクーラーに入っていた板氷を割って、少し海水を入れて磯クーラーで真鯛を冷やしました。
クーラーのチャックは尻びれの出ているところまでで止めておきました。

また飲み物を飲みました。
南風を受けて私は充実したすがすがしい気持ちでした。
磯に座ってサンスイ釣り具の御主人に電話しました。
時刻は9時過ぎですので店は忙しいかもしれません。
ですが重要な報告ですので構わないでしょう。

電話に出たご主人に「いまひと仕事終わった感じやで」といいますと、この時間にわざわざ電話をかけてきたことで察したご主人は「大型の真鯛を釣ったんか」と聞いてきます。
「釣れた真鯛のサイズは81cmです」といいますと「どこの磯で釣った」と聞いてきますので千島の「恋月」と答えました。
「そりゃよかった」とご主人は言っていますが、釣り人でもあるご主人は悔しい思いもあるでしょう。

その後はますます南風が強くなってきましたので、ハリスにジンタンを追加してウキを沈めて釣りました。
また大型真鯛がくるとも限りませんので、ウキを沈めているときはリールのベールは開けておきました。

10時ごろに道糸が走りまた真鯛が来たかと思いましたが、合わせた手ごたえはそうありません。
釣れてきたのは37cmのチヌでした。

 

千島で初めて釣ったチヌ

今まで千島では28cmのグレしか釣ったことがありませんでしたので、チヌを釣るのは初めてです。
ウキを沈めて釣ると糸が走るアタリしかわからないで今ひとつ面白くないですね。
ウキが入るときのスピードで魚を予想する面白さがないように思えます。

その後は潮が止まったり反対に流れたりします。
この間にもう1匹36cmのチヌを釣りました。

やはり真鯛が釣れた時がいい潮の時だったのでしょうか。
あまりエサがとられなくなってきました。

11時ごろ潮が左に流れたときに道糸が走り、合わせますと魚は根の向こう側に走ります。
このままでは根擦れで道糸が切れえると思い、長靴なのでシモリの上まで水の中を歩いていってやり取りしました。
竿を水平にして根に当たらないように注意してゆっくりと起こしますと魚は上がってきます。

私は掛かった魚が頭を振らないのでグレだと思いました。

ですが上がってきたのはシマダイです。
前回の野原に続いてシマダイを釣りました。
今回は少し小ぶりで33cmでした。

 

シマダイ33cm


シマダイを釣って私はおにぎりを食べて休憩しました。

10分ほど休憩して、私はハリス3号を張りなおし、道糸とサルカンの結び目をくくりなおして釣りを再開いたしました。

釣を再開した後は20cmほどのチャリコが1匹釣れただけで、エサが残る状態が続きます。
また冷たい潮が入ってきたのでしょうか。
その後魚は釣れませんでした。

渡船の迎えは3時ということですので、私は2時半に道具を片付けました。

今日は1日、道糸3号ハリス3号で通しました。
真鯛81cm、チヌ37,36cm、シマダイ33cm1匹でした。

グレは木っ端も釣れませんでした。

家にはチヌ37cm1匹とシマダイを持って帰ることにしました。
36cmのチヌは放流しました。
今日はフグが1匹も釣れなかったしスズメダイもそう浮いてこなかったので、まだ水温が低いのかもしれません。

港に戻る船でほかの3人に釣果を聞きました。
Fさんはグレ32cm1匹とチヌ40cm1匹、大阪の釣り人は真鯛と思われる魚に3回切られたが尾長グレの35cmほどを1匹釣ったということです。
もう一人の京都の釣り人は37cmほどのグレを海面まで上げたけれどもハリがすっぽ抜けたといっていました。

港に戻って駐車場で改めて真鯛を測りましたら80cmでした。
朝9時過ぎに釣りあげて氷で冷やしていましたので少し縮んだのでしょう。
船長は「きれいなサクラ鯛やな」と言っていました。
船長は魚を袋に入れて軽トラックに積みました。
このあと冷凍するそうです。
家族や旅館のお客さんに食べてもらえればよいでしょう。

Fさんに駐車場の前で前回に続いて記念写真を撮ってもらいました。

 

真鯛81cm 35年ぶりに80cmオーバーの真鯛


本格的に磯のフカセ釣を始めたのは私が25歳の時です。

亡くなった親父が「年を取ったので磯釣りクラブをやめる」といって交替で入れといって私が敦賀の磯釣りクラブに入ったのがきっかけです。
当時年を取って磯釣りをやめるといった親父の年は58歳でしたので、今の私よりも10歳も若かったのですね。

40年余り磯のフカセ釣をしてきて、80cmオーバーの真鯛を釣るのは2回目です。
磯のフカセ釣をする釣り人では、一生涯80cmオーバーの真鯛に巡り合わない方のほうが圧倒的に多いでしょう。
また、掛かっても切られる方のほうが多いでしょう。
私は80cmオーバーの真鯛を2匹釣り上げるという運命のもとで釣りをしてきたのかなと思いました。

今回は前日から準備をして偶然ではなく真鯛を取り込めたので気分は充実しています。
難しい仕事をやり遂げた感じです。

マスターモデル尾長は肉厚で重い分、粘りのある竿でした。
大型の魚が掛かって極限まで曲げて初めてその価値がわかりました。
この竿とレマーレのリールのドラグ機能があって釣り上げることができた魚だと思いました。

今回は一人で釣りましたので、最後は竿とタモを両手に持って魚を掬うことになり、まだ私も体力があるのかなと思いました。
釣のラストスパートの最中に思わぬ大型真鯛と巡り合うことができました。
こんなことがあるから釣は面白いですね。

Fさんを誘ってまた千島群礁に行こうかと思いました。
人生3回目の80cmオーバーの真鯛に巡り合えるかもですね。


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