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 上野山さんからのリポート
 「20分も竿が曲がりっぱなし

  武者泊 (愛媛県)
   2016/01/28

 

武者泊の二日目です。
今日は釣り人が10人ほどになるようです。
6時に着替えを済ませて、カップヌードルを食べてから港に向かいます。
前日ボイルのオキアミはバッカンに入れて、海水を入れておいたのですが、全然溶けていません。
出船まで30分ほどありますので、ボイルのオキアミ1枚を溶かし網に入れて港に浸けました。 

やがて6時30分になり船長がやってきます。
「Mさんたちどこに乗りたい」と聞きますので昨日の打ち合わせ通り「タチバナ」と「潮吹きの離れ」というマイナーな磯にあげてほしいと船長に言いました。
船長は「エッ、本当にそんなところでいいの」という顔をしていますが、今日はたくさんグレを釣っても持って帰ることが出ませんし、乗ったことが無い磯に上がるのは楽しいものです。

6時40分になり船は港を出ます。
今日は南から低気圧が接近してきますので午後から雨の予報です。
雲が垂れ込めていて風もなく温かい朝でした。

船は奥まで行き千畳、ワレとつけていきます。
半分ほど釣り人を下した後で「Mさんたち用意して」と船長が言いますので船首に向かいます。
最初「潮吹きの離れ」と「タチバナ」に二人ずつと言っていましたが一人ずつで「ガマゴウラ」と「タチバナ」に分かれてもよいよと船長が言いますので、私とTさんが「潮吹きの離れ」、T君が「ガマゴウラ」、M君が「タチバナ」に上がることになりました。 

「潮吹きの離れ」は湾の奥にある磯で、足元は切れていますが左右に根が張り出しています。
磯は高いところでも2mほどしかありません。
水面に出ている磯の幅は10mほどですが根は30mほど左右に広がっています。
全体に平べったい磯です。
陸から少ししか離れていませんので、なにか日本海のチヌ釣り場のような印象の磯です。 

今日も昨日と同じくTさんと釣ることになりました。
Tさんは磯の低いところから座って釣るようです。
私はTさんから3mほど離れた少し高くなった左側の船着から竿を出すことにしました。 

今日の道具立てです。
竿はアテンダーU1.5号、道糸3号、ハリス3号をサルカンで結びます。
ウキは昨日買った釣研の小粒の3Bの円錐ウキです。
サルカンの上に黄色の潮受けゴムをつけます。
潮受けゴムの下に3Bのオモリを着けます。
ハリスにはオモリを打ちません。
ハリはザ・ROCK7号です。
あとで魚が小さいので口太グレ7号を使いました。 

足元にマキエを打ちますとゆっくりと左に流れます。
Tさんは横に張り出した根の際を釣っているようです。
ウキ下3ヒロで仕掛けを足元に入れます。
しばらくしてサソイをかけてから上げてみますとエサがありません。
Tさんにどうですかと聞きましたらやはりエサが取られるということでした。
昨日は足元ではなく沖でグレが釣れましたので沖にもマキエを打ちます。
しかしどこに投げてもエサが取られます。
私はウキ下を上げて2ヒロ半としました。 

8時過ぎにTさんの竿が曲がり35cmほどのグレが釣れました。
私はかなり沖に遠投してようやく25cmほどのグレが釣れましたが、これは放流サイズです。
足元と沖と交互にウキを入れますが、足元ではエサが取られ沖では30cmまでのコッパグレが釣れてきます。

そのうちウキが入らないのに仕掛けを上げると魚が掛かっていました。
これが上手にエサを取っていたのだと思います。

エサトリのハゲ科の魚 30cmほどありました


Tさんはその後アイゴやイズスミなどが掛かりよく竿が曲がります。
「何か魚が掛かると楽しいものですね」と淡々と釣りをされています。
二人とも魚が掛からないときは、Tさんがサンスイのチヌ釣り大会で優勝した昔話などしていました。

その後Tさんに大きな魚が連発で掛かりました。
1匹は50cmほどのイガミ、もう1匹は60cmほどのブダイの仲間と思われる魚です。
いずれも今日は持って帰るスペースがないので放流しました。

足元にはキバンドウが泳いでいますがこの魚は足元にウキを落としてもエサには食いつかないようです。
私はこれが掛かるといやですので、足元にウキを投入する時はキバンドウがいないのを確認してからウキを落としました。


Tさんが釣り上げたイガミ50cm


Tさんが釣り上げたブダイの仲間60cm いかにも南方系という顔だ


私には相変わらずポツポツと30cmまでのグレが釣れます。
中には敦賀の波止場で釣れるような10cmほどのグレも釣れてきます。
「私には日本海で釣りをしているようなサイズのグレしか釣れません」とTさんに言いますと「この磯は奥まっているのでそんなサイズの魚の付き場なのでしょうね」とTさんが言います。

11時ごろになり私はこのままではボーズだと思い、31cmと30cmのグレ2匹をバッカンに入れました。
この頃から潮は右に流れるようになりました。

Tさんは足元でまた35cmほどのグレを釣り上げました。
「今日はよく竿が曲がって楽しいですな」とTさんは何度も竿が曲がったので満足そうです。
昨日から2日間Tさんと釣りをしていますが、Tさんにいろいろ大きな魚が掛かりますがほとんど座ったままやり取りをしてバラスことがありません。
柳に風のような、ゆったりとしたやりとりですので魚が怒らずにすんなりと浮いて来るのかもしれません。
やがて1時ごろになりTさんは「少し早いですが今日はもう店じまいです」と言って道具を片付け始めました。

私は沖を流していましたが40cmほどのサンノジが掛かり、サンノジを上げた後で、道糸がヨレて結び目ができてしまったので、道糸を20mほど切って仕掛けを作り直しました。
ついでにハリスも短くなりましたので交換いたしました。
その時にハリも口太グレ7号に替えました。
今振り返りますと、ここで仕掛けを作り直したのが良かったと思います。 

ウキを沖に投入すると右に10mほど流れたウキがシモッて行き見えなくなりました。
合わせますとこれは久しぶりのグレの引きです。
釣れたのは、この磯では大きなサイズの35cmほどのグレでした。

 

潮吹きの離れでようやく釣れたましなグレ 35cm 
リールの3号の道糸がだいぶ少なくなっている


Tさんが道具をしまったために私はTさんが釣っていたアタリまでウキを流すことができます。
できることならもう1匹グレが釣れないかと私は沖にウキを投げました。
10mほど流して、沖に投げた仕掛けを巻ますとエサが着いてきます。
今度は50cmほどウキ下を下げて沖に仕掛けを投入しました。
時刻は1時25分ですのであと2,3回投げれば終了です。
エサが着いて上がってきましたので、少し長く流そうと道糸を出しながらウキを流していますと、ウキは右手に流れて磯のほうに寄ってきます。
そして磯から右手に張り出している根の際まで流れました。

20mほど道糸を出したでしょうか、根の際まで流れたウキが入ると同時に竿が引き込まれました。
リールのドラグがジャーという音をして滑ります。
これは怪力の魚が掛かかってしまいました。
竿はひん曲がったままでスプールが逆転して糸が出続けますので、糸が出ないように右手でスプールを押さえますがスプールの逆転は止まりません。 

「リールが火を噴きそうです」とTさんにいって、私は竿をのされながら及び腰で磯の前に出ました。
ここまで3秒ほど耐えましたのでもういいかと思いましたが、さいわい魚は沖に走りましたのでバレずに付いています。
ハリス3号ではここまでで、もう上出来ではないでしょうか。
アテンダーUは満月以上に曲がっていますが、きれいに曲がっているので折れることはないと思いました。
魚はいったん止まりましたが、手ごたえは岩でも掛けたみたいで、竿で引いても全然動きません。
もしかして根に入ったのではないかと思いましたが、時折魚が動いてその都度ジャーと糸が出されます。
なんだか満月に曲がった竿がミシミシといっているような気もします。
魚とのこう着した状態が続きます。
魚が動いたときには、リールを1回ほどは巻けますが、すぐにドラグが滑って糸が出ます。
でもリールのドラグが滑るジャーという音がだんだん少なくなってきました。
リールが巻けるときは2,3回ハンドルが回るようになりましたが、また同じ分くらいが出されるといった感じで魚はまったく浮いてきません。
ウキも全然見えないので、いったいどれくらいの深さのところに魚がいるのかが分かりません。
磯際で道糸がこすれて切れるといやなので磯の前まで出てやり取りをしていましたが、どうも魚が右側に引いているようなので、磯を右側に4mほど移動いたしました。
私が右に移動する分道糸を巻けましたので、道糸は4mほど巻けたのではないでしょうか。
海に入っている道糸の先を見ましたらぼんやりと海中に赤いウキが見えます。
私はもしかすると、この魚は獲れるかもしれないと思いました。 

竿で魚を持ち上げて、リールのハンドルを2巻ほどしましたら底のほうで魚が反転しました。
チラリと見えたのは青い魚体でしたので「これはアオブダイかもしれません」とTさんに言いました。
魚はだんだんと足元に寄ってきますが、時折急に潜りますので今度はレバーを使ってリールを逆転して
竿を立てる分だけ糸を出します。
この魚とのやり取りでは、シマノのリールの全機能を使っているような気がいたしました。

私のシマノのリールは、レバーをオプションの真っ直ぐに近い赤いレバーに替えているのですが、これが樹脂でできています。
サンスイ釣具のご主人から、四国に行くときは強烈にレバーを握るかもしれないので、折れるといけないので標準のアルミのレバーに替えたほうがいいと言われていました。
言いつけを守らなかったのですが、長時間レバーを握りしめていますが折れることもなく使えています。
リールのドラグも程よい具合に滑りますので、この魚が獲れたら80%はリールの性能で獲れたと思います。 

魚が海面に近づいてきましたので、私はリールのドラグをやや強めに調整して糸が出ないようにしました。
ここまで来ましたらあとはレバーブレーキの対応だけで上げられそうです。
やがてレバーブレーキを使って糸を出したり巻いたりしながらも魚は浮いてきました。
足元に姿を現しましたのは巨大なアオブダイです。 

2012年5月のぐれねっと釣行記NO178「アドレナリンが吹き出すような強烈な引き」で下山さんと、ここ、いろは渡船で磯釣りに来て上げたアオブダイは67cmでした。
当時は竿2号、道糸ハリス4号ですが、今日はそれよりも一回り細い道具立てで、はるかに巨大な魚が上がって来ました。
私は海面に浮かんだ巨大な魚を見てようやく獲れたと思いました。 

魚が水面に横たわりましたのでTさんにタモを入れてもらおうと思いましたが、私はその姿を見て「これはタモに入るかな」と思いました。
Tさんがタモを差し出しますが魚は頭しか入らずにずるずるとタモから出てしまいます。

2回やってみて入らないのでTさんが「波が来た時にずり上げてみては」と言いますがこんな重たい魚を3号ハリスで引きずり上げるのは無理だと思いました。
ハリは小さい口太グレ7号ですので、無理をすればハリが伸びるのではないかとも思いました。
これは大トラブルです。
このまま水面に浮かんだ魚を写真にとってハリスを切ればよいかなとも思いましたが、それでは後で化け物を釣った話になった時に魚のサイズがわからないとも思いました。

ふと、もしかしたらTさんのタモのほうが深いのではないかと思いTさんに「すみませんが、タモの網をTさんのものに交換してもらえませんか」と頼みました。
「よしわかった」と言ってTさんはタモの網を外して自分のタモの網を出してきて組み立てています。
これが60cmのオナガグレでしたらはらはらしますが、アオブダイですので私は待っている間も悠然と構えていました。
魚はもう竿を引き込む力はなく海面に横になっています。
2分ほどしてタモの網を交換したTさんがタモを入れてくれました。
見たところTさんの網のほうが深そうです。 

今度は1回で魚は網に入りました。
Tさんがいなかったらこの魚は獲れませんでした。
最後にタモの網を交換するというドタバタがあったものの、何とか魚を磯の上まで上げることができました。
魚を網に入れたまま、以前下山さんにもらったメジャーを当てましたら90cmほどあるようです。
前回の67cmのアオブダイの記録を大幅に更新いたしました。 

口太グレ7号は口の横のかんぬきにチョンと掛かっていました。
このハリは魚と比べるとホンマに小さな針です。
3号ハリスも少しこすれて口の上あたりがザラザラになっていました。
アテンダーU1.5号で道糸3号、ハリス3号でも大きな魚が上げられるものだなと我ながら感心しました。

 

アオブダイ90cm 魚の尾がタモの中で曲がっていますがメジャーは魚の内側で80cm以上差しています


魚は写真を撮って放流しました。
アオブダイはすぐに深みへと泳いで行きました。
時計を見ますともう1時45分です。
魚が掛かったのが1時25分過ぎでしたので、やり取りに20分近くかかったということです。
自分では5分ほどかと思いましたが集中していたので短く感じられたのでしょうね。
よくまあ20分も竿が曲がりっぱなし、糸も張りつめたままで仕掛けが持ったものだと思います。 

「潮吹きの離れの主のような魚でしたね。それにしてもよく獲れました」とTさんに声を掛けられました。
「私の釣り人生でこれ以上大きな魚を磯から釣り上げることはもうないかもしれません。それにしても何度もTさんが流していた場所で最後に私の仕掛けに食いつきました。これも不思議ですね、それとよく1.5号の竿とハリス3号が持ってくれたものです」と私は答えました
「横で見ていて、あんたの竿は大きく曲がってからが胴の部分が強そうな感じでしたよ」とTさんが言いました。
アテンダーUのような胴調子で粘りのある竿は「がまかつ」の本来の竿の持ち味でしょうか。

今日は竿もリールも釣り人も最高のパフォーマンスをして、90cmもの巨大アオブダイに巡り会えたということでしょうか。 

やがて2時になり渡船が迎えに来ました。
渡船に乗り込むと、私はほとんど脱力していました。

港に帰りましたら「タチバナ」に上がったM君はグレ49cmまでを8匹釣りあげ5匹持って帰ったということです。
2ヒロでイサギが釣れたということでしたので、今日も水温が上がったのかもしれません。
「ガマゴウラ」に上がったT君も10時までには45cmまでのグレを5匹釣りあげ、ハリを飲んだ2匹を持って帰ったということです。

化け物狙いで「ガマゴウラ」に上がったT君に大物はアタらずに私に来るという結果となりました。
T君は私が切られたサラシの前にウキを投入したけれども、アイゴばかりが釣れて糸を切っていくような化け物は来なかったと残念そうです。 

2日目も4人でグレは17匹釣ったことになります。
今回は2日続けて全員がグレを釣るという、近年になく良く釣れた四国釣行となりました。

昨日はSさんたち二人組が27枚ものグレを釣ったということですが、そのことを話していましたら「私は一人で5枚も釣ればもう満足という感じであとは放流してしまいますね」とM君が言い、全員納得してしまったので、我々は小心者の釣り人のようです。 

私は記録更新のアオブダイを釣り上げてしまい、少し気が抜けたような感じです。
さて、次回の釣りはいつになるでしょうか。
こう簡単にグレが釣れるとなると、また四国になるでしょうか。
いや、三重県で深いタナで食い渋るグレを1匹釣るのも趣があってよいでしょうか。
ライフワークの若狭湾、音海で40cmのグレも釣り上げなければなりません。
磯釣りは楽しいですね。 

今回は老釣師のTさんと釣りをして、魚の大小に関係なく淡々と磯釣りを楽しむ姿に感銘を受けました。
私もTさんの年まで磯釣りができれば、あと100回は「ぐれねっとに」レポートを書けるなと思いました。
次回も釣れたよというレポートが書けるとよいのですが。

 

今年60歳になるので赤いライフジャケットを新調しました




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