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上野山さんからのリポート
「虫のついたサヨリを採集する」
敦賀湾内の堤防 (福井県)
2022/10/15
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10月2日に敦賀市内の堤防に釣りに行ったリポートは「ぐれねっと」No292「忙しすぎて趣がない」にまとめてあります。
その日の釣果はグレ以外にサヨリが7匹ありました。
小さいサヨリでしたが、食べるとおいしいということでグレ釣りの外道で釣れたサヨリを持って帰ったわけです。
鬼嫁は、グレとサヨリを造りにしようと台所に魚を持って行ったところ、「サヨリに虫がついているで」といいます。
私は、サヨリでしたら鰓のところについている白いゾウリムシみたいなものかと思いましたが、背中のところに青い管のようなものがひっついています。
うちの鬼嫁は、敦賀の中池見湿地で自然解説などをしておりますが、そこで知り合った県の内水面総合センターに勤めているN君という、魚の寄生虫の研究をしているという方から「上野山さんの旦那さんが釣った魚に寄生虫がいたらその部位を送ってほしい」と言われていました。
これは、虫かもしれないとN君に料理の前に写真を撮って送ったところ、N君から「これは寄生虫と思われるので、この部位を保存しておいて送ってほしいと」いわれました。
この日は虫のついているサヨリの半身を冷凍庫に保存して、半身は刺身で食べてしまいました。
これを書いていて、我ながら虫のついていたサヨリを食べてしまうところはすごいと思いました。
翌日、N君の公開した虫の写真を見た「水族寄生虫研究者」のN氏から連絡がありました。
氏のメールの内容は「この寄生虫は1930年代に新種として報告されて以来、約80年以上見つかっていない幻の寄生虫、サヨリイカリムシモドキと思われる。 自分も数十年探していたが見つけられなかった」とのことです。
今後、また同じ虫がついたサヨリを釣った場合は、ぜひとも宅配便で送ってほしいとありました。
N氏は、現在静岡県にお住まいの広島大学名誉教授という方で、「水族寄生虫研究室」というホームページも運営されておられます。
私は、世の中にこんな虫を専門に研究されている方もいるのだと驚きました。
N氏にはどのような状況でサヨリが釣れたのかをお知らせするためにメールを送り「ぐれねっと」の釣行記を見ていただきました。
N氏からは折り返しのメールで「ぐれねっと」の感想などもいただきました。
大学の名誉教授の方にも「ぐれねっと」を読んでいただきまして、下山さんも笑っていることと思います。
私は再度、虫のついたサヨリを釣ろうと思いました。
N氏には「10月15日に今度はサヨリメインのグレ釣りに行き、虫のついたサヨリが釣れましたら凍らせずに生のまま宅配便で送ります」と連絡をいたしました。
N氏からは「幸運にも釣れましたら、お手配をお願いいたします」というメールが来ました。
これは期待して吉報を待っておられることと思いました。
なんせ、80年間見つかっていなかった虫です
N氏も長年探し求めてきたということです。
サヨリやグレは釣れないことはないと思いますが、虫のついたサヨリは狙って釣れるものではないと思います。
鬼嫁が昆虫などの調査をしている方とこの話をしましたら、「まあ狙って虫を採集しようと思うと、なかなか見つからないので、狙って釣りに行っても難しいのでは」ということです。
私も虫がついたサヨリを釣るのは運しかないと思いました。
10月15日は朝5時前に目が覚めましたが、朝早くから釣りに行って1日釣りをしても釣れるかどうかわからないので、普段通り午後から3時間程度釣ろうと思いました。
普段以上に力んで釣りをしてもしようがないという思いです。
サンスイ釣り具店には、いつものように12時にオキアミを取りに行くと連絡いたしました。
私は12時前にサンスイ釣り具に行って、今日は虫のついたサヨリを狙って釣る話をしました。
「ここ2年ほどは、湾内でサヨリに虫がついているとは聞くけれども、そんなうまい具合にすぐ釣れるかな」とご主人は言います。
もし釣れた時に魚を送るときの発泡の箱はあるかと聞きますと、御主人の家にあるものを使ってもらってよいということです。
12時半ごろに堤防につきますと、いつものアジ釣りをしているおじさんがいました。
「今日もアジ狙いですが」と聞きますと「今日は投げサビキで大きいアジを狙っているよ。20cmくらいのは釣れる」ということです。
私はこの方の横で反対向きに釣ることにしました。
今日は、氷を入れたクーラーをもってきて、魚を入れるジップロックの袋も用意してあります。
万全の支度の時はえてして釣れないですね。
今日も飛ばしウキと発砲ウキの2段ウキ仕掛けとしました。
サヨリ狙いですのでウキ下は20cm程度です。
数回マキエを撒きますと、水面がザワザワします。
前回のようにサヨリも見えます。
まずは、サヨリがいたということで一安心です。
今日はハリス1.5号を使い、4号のスレバリを結びました。
ウキを投入するとすぐに発砲ウキが横に引っ張られますが、合わせてもサヨリは掛かりません。
ウキが動いたときに合わせますがサヨリはハリに乗りません。
前回はどうやってサヨリを釣ったのかと考えてしまいます。
最初の20分ほどはカラブリばかりでしたので、これではサヨリは釣れないのではと思いました。
よく見ますと、合わせた後にハリに少し餌が残ってきますので、もう少し遅く合わせようと思いました。
発砲ウキが動いてもすぐに合わせずに、少し引き込まれたようなときに合わせますとサヨリが釣れました。
1匹釣ってほっと致しました。
N氏には「小さいハリでやれば、サヨリは50匹くらい釣れると思います」とメールに書きましたが、サヨリ釣りはやってみますと小さな口にハリをかけるのはなかなか難しい釣りです。
この釣り方で4回投げて1回くらいサヨリが釣れるようになりました。
サヨリのほかにもアジやアイゴが釣れますので忙しい釣りです。
5匹目に釣れたサヨリの背中に青い虫がついていましたので、写真を鬼嫁にラインで送ってN君に見てもらいました。
「これはくだんの虫」ということで、私は釣場からN氏に電話を掛けました。
「もう釣りをやめてサカナを送ればよいですか」と聞きますと、N氏は私からの突然の電話でビックリされたようですが、「まだしばらく釣りを続けてほしい、できれば釣ったサヨリを全部送ってほしい」ということでした。
そして「上野山さん、今日はサヨリ記念日ですね。いつでも電話してきてください」と電話の向こうでおっしゃいました。
「サヨリ記念日」は俵万智さんの「サラダ記念日」のしゃれですね
N氏は初対面の相手に洒落を言ってしまうとは、よほど虫付きサヨリが釣れたのが嬉しかったのでしょう。
嫁からは「狙いの虫付きサヨリを釣るとは、アンタ持っているな、もうすぐ死なんか」と憎まれ口をたたかれました。
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背中についた サヨリイカリムシモドキ 左の上のほうです |
結局、4時前まで釣りをしてサヨリは28匹釣りましたが、虫のついたサヨリは5匹目に釣れた1匹だけでした。
終了間際にグレを釣ろうと思いタナを60cmにしましたら25cmほどのグレが1匹釣れました。
今日は3時間ほどの釣りでしたが、最初はサヨリが釣れずに焦りました
釣をする前に「50匹くらい釣れる」なんて言ってはダメですね。
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この日の釣果 グレ25cm サヨリ28匹
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その後は急いで仕掛けを片付けて、サンスイ釣り具店に寄って発砲の箱と保冷剤をもらって自宅でサヨリを梱包して、ガムテープでふたを固定してN氏に宅配便で送りました
箱の準備をしていただいた釣具店にも感謝です。
翌日夜にN氏から無地に標本を採取できたと連絡がありました
これでひとまず、無事に任務終了となりました。
翌16日も午後から、今度はグレ釣りに堤防に行きました。
今度はタナを70cmほど取りましたら25cmまでのグレは5匹ほど釣れましたがサヨリは1匹も釣れませんでした。
やはり、サヨリは専門に浅いタナで狙ってやらないと釣れないと思いました。
今回、晩のおかずに持ち帰ったサヨリから、寄生虫研究者の方と知りあいになりました。
人生はひょんなことから、いろんな方と関わることもあるので面白いですね。
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